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人権侵害事件についての警告等

2019年8月20日付 警察庁長官,兵庫県警察本部長,明石警察署長宛 警告

 中度の知的障害を有する申立人は,第三者所有の車の側面を叩き,損傷を与えたとして器物損壊事件の被疑者となりました。明石警察署の警察官は,令状を取得することなく申立人の指紋及びDNA採取を行いました。指紋の採取にあたっては同行していた申立人の母親から同意を得ていた可能性がある一方で,DNA採取にあたっては母親を含む家族等の同意を全く得ていませんでした。
令状を取得することなく任意捜査として指紋及びDNA採取を行うためには,本人の同意が必要となります。もっとも形式的に同意があっても,同意をした者が当該捜査により侵害される利益の存在及び内容を正確に理解していなかったのであれば,当該同意は有効になされたとはいえません。
 ここでDNA情報は遺伝情報の集合体であり,個人の識別にも用いられる究極の個人情報です。ところが,申立人は,前記のとおり中度の知的障害を有しており診断書によれば「何事においても見守り・指示がないと,自ら動くことはなく,また,自らの判断・決断能力に重大な欠陥が認められる」状態でした。そうすると,申立人は,自らのDNA情報を捜査機関に提供することの意味やそもそも遺伝情報や個人情報といった概念を正確に理解できたとはいえません。
このようなことから,明石警察署の警察官が,令状を取得することもなく,同行していた母親の同意すら得ることもなく,DNA採取を行った捜査は違法であったと判断しました。
 そこで,上記のような違法な捜査により取得された申立人のDNA型記録データの抹消・廃棄を求めるとともに,同様の捜査が二度と行わないよう警告しました。

2019年1月11日付 兵庫県警察本部長,兵庫県灘警察署長宛 勧告

 知的障害を有する申立人が,勤務先からの帰宅途中に路上にて,灘警察署の警察官から職務質問を受け、その際に警察官は申立人から療育手帳を示され障害の存在を認識し得たにもかかわらず、申立人は路上での2度の所持品検査を受け,灘警察署に移動後も,約1時間半の署内での留め置き・所持品検査・スマートフォンの写真の閲覧・申立人の写真撮影・今後特定の公道を歩かない旨の上申書の作成をさせられました。この一連の流れにおいて,警察官らが障害者権利条約や障害者基本法で求められている障害者の特性に応じた意思疎通の手段を確保すべき配慮が行なわれず,申立人の適正な手続によらない捜査等を受けない利益やその他様々な申立人の人権を侵害したまたはそのおそれがあったと判断し,障害者への相当な配慮を欠いた対応を改めるとともに,障害者権利条約や障害者基本法で定められている研修その他必要な施策を通じて障害者に対する相当な配慮の実施を徹底するように勧告するものです。

2018年10月24日付 法務大臣,法務省矯正局長,大阪矯正管区長及び神戸刑務所長 宛 勧告

 神戸刑務所に収監された性同一性障害者2名(いずれも生物学的には男性、性自認は女性の事例)に対し、監視カメラ付き独居房に収容する、男性としての髪型を強制する、女性用着衣の使用を制限する、労役場への出入りの際、男性職員による身体検査を実施するなどの処遇が行われています。
 このような行為は、申立人らの性自認に沿った扱いを求める権利を侵害するものであると判断し、性同一性障害者が性自認に沿った扱いをされることが当然保護されるべきことが認識され、今後、同様の事態が繰り返されないよう、刑務所収容に際しての振分け基準から抜本的に見直すよう勧告したものです。

2018年9月14日付 フェリー会社宛要望

 本件は、障がいを有し、常時電動車いすに利用している申立人が、旅行先から関西に戻る際に、フェリーの乗船を申し込み、現にチケットの発券を受けたにもかかわらず、その後、申立人が電動車いすを用いていることに気が付いたフェリー会社従業員から乗船を断られ、結局、フェリーに乗ることができなかったという事案です。
 旅行をすることや、その移動手段として公共交通機関を用いることは、障がいの有無を問わず、誰にでも認められている重要な権利です。したがって、公共交通機関が、施設の構造上の問題などを理由として、その利用を拒むことは、真にやむを得ない事情がある場合でなければ許されません。
 本件のフェリー会社では、過去に同様の事案において、車いすの人を乗船させている実績があり、実際に船内には車いすの人のための設備も備えられていました。この点に照らすと、本件において、フェリー会社が、現にチケットを発券され、乗船できると期待していた申立人に対し、乗船を拒否したことについては、やむを得ない事情があるとは認められず、当会は結論として、フェリー会社が電動車いすを用いていた申立人を不当に不利益に扱い、申立人の旅行の自由を侵害したと判断しました。
 他方で、フェリー会社は本件を受け、福祉車両を導入するなどして、電動車いすの人が乗船できるよう一定の対策を講じていました。当会は、この点も考慮した上で、フェリー会社に対し、社員研修を行うなどして、再び同じようなことが起きないよう要望しました。

2018年4月6日付関西電力株式会社宛勧告

 地中に送電線を設置する計画の見直しを求める住民らが、計画の見直しを求める署名を相手方に提出したところ、相手方(事業者)の従業員が、事前に連絡をすることもなく署名者宅約1400戸を2名1組で戸別訪問し、署名を行った理由や事業計画に対する不安の内容を尋ねてまわったという事案です。相手方は、署名者側の代理人弁護士による抗議を受けた後にも、住民に対する戸別訪問を継続しました。
 そもそも署名活動は、個々人では意思表明を躊躇せざるを得ない市民が集団で行う表現行為であることから、署名の相手方による署名者個人に対する直接の働きかけには許容される限度があるといえます。
 本件においては、相手方は、既に実施していた説明会等を通じ、住民の不安が磁界による健康被害のおそれであることは十分把握可能でした。また、相手方の前記戸別訪問により、多数の住民が実際に相手方からの強い圧力を感じて不安を抱き、これによりその後の住民の署名運動は下火となりました。
 前記の事情から、本件では限度を超えた働きかけがあったと判断しました。
 そして、相手方が署名者側の代理人弁護士による抗議を受けたにもかかわらず戸別訪問を続けたこと、相手方が類似の事案で既に大阪弁護士会の人権擁護委員会から要望を受けたことがあったこと、本件戸別訪問が署名活動に与えた影響・度合いを踏まえ、相手方に強く再考を求める勧告が相当であると判断し、結論として、今後署名者個人に直接働きかけることにより署名活動への不当な萎縮効果を生じさせないよう勧告したものです。

2016年7月5日付加古川刑務所宛勧告

 本件は、受刑者の面会に関する刑務所の裁量の範囲が問題となった事案です。
 刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(以下「法」といいます)第111条1項では、受刑者の親族等について面会を原則許可するものと定め、同条2項では、前記以外の者でも、交友関係の維持その他面会をすることを必要とする事情があり、かつ面会によって刑事施設の規律及び秩序を害する結果を生じ、又は受刑者の矯正処遇の適切な実施に支障を生じるおそれがないと認める場合には、刑務所長の裁量により面会を許可することができると定めています。
 申立人は、加古川刑務所に入所し、入所から1年半ほどの間に、申立人の母の内縁の夫であるAさんとの面会を申し出たところ、加古川刑務所から3回について面会を不許可とされ、2回について面会を許可されました。
 なお、申立人とAさんとの間で許可された2回の面会は、いずれも法111条2項により刑務所長の裁量で認められたものであり、不許可とした3回の面会について、刑務所はその理由を「面会の許否判断をするため申立人の母とAさんとの内縁関係を疎明する公的資料等(住民票など)の提出を求めたが、提出されなかったため、判断を行うことができなかった」としています。
 社会と隔絶された刑務所内で受刑する受刑者にとって、面会や信書の発受等といった外部交通は、家族との絆、社会との繋がりを確保するため、また、それにより釈放後に円滑な社会復帰をするためにも非常に重要な権利です。
 上記のような外部交通の重要性、また、受刑者の信書発受等に関する過去の裁判例をふまえて検討した結果、当会は刑務所側が申立人とAさんとの面会を3回にわたって不許可としたことは、刑務所長に認められた裁量の限度を超えた処分であると判断しました。
 そこで、加古川刑務所に対して、今後受刑者と親族等以外の者との面会の申出については、@面会によって拘禁目的が阻害される現実的危険性が発生し、その危険を排除するために最小限度の制限として、面会を不許可とすべきことが個別具体的な根拠により確認できる場合でない限り、面会を許可すること、A法111条2項に基づき「面会することを必要とする事情」を判断する際には、刑務所側が既に保有する客観的資料などで記載内容が真実でないことが明らかでない限り、「親族申告票」「親族外申告票」の記載や公的な資料の提出の有無にかかわらず、面会申出者や受刑者の説明、面会申込書の記載内容を尊重すること、を勧告したものです。

2016年3月11日付加古川刑務所宛て勧告

 本件は懲役刑の受刑者にも裁判へ出廷する権利が保障されるかが問題となった事案です。
申立人は、相手方加古川刑務所における服役開始後に、服役の原因となった刑事事件の被害者とされる人物から損害賠償請求訴訟を提起されたため、 同訴訟の口頭弁論期日への出頭のため3度にわたって刑務所へ出廷許可を求めたものの、いずれも不許可とされました。
 裁判を受ける権利は、自力救済が禁止される我が国において、憲法及び法律上の権利・自由を実効的に保障するものとして重要な権利であり、「基本権を確保するための基本権」として法の支配の不可欠の前提をなすものです。このような裁判を受ける権利の重要性に照らせば、出訴の権利のみならず、公開の対審手続(当事者双方が裁判所の面前で自己の主張・立証を行う機会が十分に与えられること)まで保障されなければなりません。
 確かに、懲役刑は、人身の自由を制限する刑罰ですが、それを理由に他の権利・自由に対する制限が当然に正当化されるものではありません。
 当会としては、裁判への出廷は保障されるべき権利であり、本件において、相手方が具体的事情を考慮することなく、一般的抽象的に申立人の出廷をすべて不許可としたことは申立人の権利を侵害したものと考え、勧告を行ないました。

2016年1月6日付兵庫県警察本部及び垂水警察署宛意見

 兵庫県内にある警察署内の留置施設には、机や机の代わりになる物がありません。
 本件は、申立人が垂水警察署の留置施設に勾留されていた間、机がないため食事を床に直接置いて食べる生活を強いられた等を理由として申立があったものです。
 机がないことによる生活上の支障については、食事の際の衛生面の問題のほか、書類の作成、記録や書籍の閲読の際の不便さも考えられます。
 このような状況は、いずれも、食事をしたり、手紙を書いたり、本を読んだりすることを直接的に制限するものではありませんが、一般的に考えられる生活環境の水準を下回っていると考えられることから、収容されている人が小机やその代わりとなる物を利用出来るよう、意見を表明しました。
 なお、警察署の留置施設と同じく、未決被拘禁者(逮捕による身柄拘束後、裁判による有罪判決が確定していない人)が収容されている拘置所では一般的に居室内には小机が常備されているほか、他の都道府県では、警察署内の留置施設において収容されている人に小机を貸与しているところもあるようです。

2015年6月23日付法務省、同大阪矯正管区及び加古川刑務所に対する勧告

 申立人は、戸籍上は男性ですが、女性としての性自認を持ち、かつ性適合手術を受けて女性としての身体的特徴も備えている被収容者(申立当時)です。
 同人からの申立については、既に当会から2012年2月23日付けで、法務省等に対し、同様の受刑者は女性用の施設へ移送するよう勧告していますが、当会からの勧告後も申立人は女性用施設には移送されることなく、反則調査の際に単独室内で男性刑務官から着衣の検査をされる等の処遇を受けていました。
 当会としては、先の勧告同様、本件のような女性としての性自認及び女性としての身体的特徴を有する者は女性として処遇すべきと考え、このような被収容者に対する身体、着衣の検査は女性の被収容者と同じ扱いとするよう、また、男性刑務官が身体、着衣検査をすることを許容している現行の運用については速やかに改めるよう勧告したものです。

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兵庫県弁護士会