弁護士会の取り組み

各種委員会の紹介

取調べの可視化について

 「取調べの可視化」とは、取調べの全過程を録画することです。取調べの状況を事後的に検証することができるようにするとともに、取調べを可視化することによって違法・不当な取調べを防止・抑止することを目的とするものです。
 我が国でも、多くの事件の取調べは、外からは見ることのできない「密室」で行われます。この密室での取調べで、捜査官による暴行・脅迫・利益誘導などが行われ、しばしば「虚偽の自白」が作られていくのです。その結果、冤罪事件が発生し、取り返しのつかない冤罪被害が生じるのです。
 取調べの可視化は、刑事訴訟法の改正によって、裁判員裁判対象事件など一部の事件について実現することとなりました。しかし、可視化が義務付けられた事件は、全体の約2~3%程度とされ、依然として圧倒的多くの事件では可視化が実施されておりません。
 兵庫県弁護士会では、全事件に取調べの可視化を広げ、真の「取調べの可視化」を実現すべく活動を行っております。

取調べの立会いについて

 「取調べの立会い」とは、取調べが行われている取調室内に弁護人を立会わせることです。取調べの可視化では事後的な検証しかできないため、実際に行われている違法・不当な取調べをリアルタイムで防止することを目的とするものです。

 我が国の取調べは、取調室という密室で行われ、被疑者はひとりで捜査官と対峙せざるを得ません。圧倒的な力関係の差が冤罪を生んできた原因です。この圧倒的な力関係の差を是正し、違法・不当な取調べをリアルタイムで防止するためにも、取調べの立会いが行われる必要があります。

 しかし、我が国では、法律上、取調べの立会いは認められておらず、捜査官側の「裁量」でごく一部認められているにすぎません。

 日弁連や兵庫県弁護士会では、最終的な全面的取調べの立会い実現のため、まずは在宅事件での取調べの立会いを実現すべく弁護活動を実践するとともにそれに対する資金援助を行っております。

活動の内容

(1) 市民のみなさまへのアピール

 兵庫県弁護士会では、取調べの可視化・立会いの必要性を市民の皆様にご理解いただくため、著名な冤罪事件の被害者の方や弁護団をお招きし、不定期でシンポジウムを開催しています。興味がおありの方は是非ともご参加ください。
これまでのシンポジウム実施状況についてはこちら

(2) 出前講座

取調べの可視化・立会いについて「出前講座」として無料の弁護士講師派遣を行っております。可視化・立会いに留まらず、広く刑事司法制度に関することをテーマとして講義・講演可能です。講演会・学習会などの企画の際にはご利用をご検討ください。詳しくは、添付の「無料講師派遣のご案内」(PDFファイルへリンク)をご覧ください。

(3) 県議会への意見書採択運動

兵庫県の全ての市町議会(PDFファイルへリンク)において「取調べの可視化を求める意見書」が採択されています。しかしながら、兵庫県議会においては、未だ意見書が採択されていません。兵庫県弁護士会は、県議会にも意見書を採択していただけるよう、鋭意活動中です。

(4) 可視化・立会い実践弁護

 我々弁護士自身が、日頃の弁護実践の中で、被疑者・被告人の防御権を全うするとともに、取調べの可視化・立会いを実現すべく弁護活動を実践していきます。具体的には、「可視化申入書」「立会い申入書」や「準立会い(同行)」の実践、「被疑者ノート」の活用などです。

今こそ取調べの可視化・立会いの実現を

 取調べの可視化・立会いは、今や世界の潮流・ミニマムグローバルスタンダードと言って差支えありません。アメリカ、イギリス以外にも、フランス、ドイツ、イタリアといったEU各国、台湾や韓国といったアジア諸国でも取調べの可視化・立会いは既に認められています。

 一方で、我が国では、取調べの可視化が法律で義務付けられているのは全体の約2~3%に過ぎず、取調べの立会いは法律で認められていません。捜査機関側は、取調べの可視化・立会いは捜査に支障を来すとして非常に消極的な態度をとり続けています。

しかし、取調べの可視化・立会いが実現した国では、捜査に支障が出ておらず、むしろ、肯定的に受け止められている状況です。事実、我が国でも一部行われている取調べの可視化・立会いで、捜査に支障が生じたという報告はありません。我が国も世界の潮流に合わせて、全事件での取調べの可視化、そしてその先にある取調べの立会いを実現しなくてはなりません。

兵庫県弁護士会は、取調べの可視化・立会い実現のため活動して参ります。皆様のご理解とご協力をお願いいたします。

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