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意見表明(1998年-2010年)

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ハンセン病の患者であった人々の人権を回復するために(要望)

2001年(平成13年)7月19日

兵庫県知事 貝原 俊民 殿

兵庫県弁護士会 会長 大塚 明

 既にご案内のとおり、熊本地方裁判所の判決により、らい予防法によるハンセン病の患者であった人々の強制隔離が、違法であり、重大な人権侵害であったことが認定されました。国も控訴せず同判決を受け入れ、国会も謝罪決議の上、補償法を制定しました。

 しかし、同法は補償としての一時金支給を定めただけであり、元患者の全面的な被害回復・人間の尊厳を取り戻すための施策は、今後の課題として残されたままです。強制隔離による被害の回復のためには、原状の回復すなわち元患者がかつて暮らしていた故郷に戻り、社会の一員として当たり前の生活を送れることが必要です。しかし、長期にわたる強制隔離による家族・社会基盤の崩壊と、根強く残る偏見と差別、加えて元患者の高齢化と経済的な問題という厳しい現実があり、元患者の社会復帰・帰郷は容易なことではありません。

 本県出身の多数のハンセン病元患者もまた、故郷や家族と引き裂かれ、長期間療養所において強制隔離された生活を余儀なくされてきました。

 兵庫県は既に、入所者の里帰り事業や訪問等の事業を行い、貴殿も「ハンセン病患者・元患者の方々へ」という知事談話を発表されました。これらに加えて兵庫県が、かつての無らい県運動と強制隔離・強制収容についてさらにその真相を究明するとともに、社会復帰・帰郷を希望される本県出身者の元患者の願いに応えるための諸施策を講ずることは、緊急の課題であると当会は考えます。

 よって、当会は貴殿に対し、以下のとおり要望いたします。

1、無らい県運動を展開し、強制隔離・強制収容を実施したことの真相を究明し、謝罪すること。元患者の名誉回復措置を講ずること。

2、ハンセン病に対する差別・偏見を除去するため、正しい知識を周知徹底させる広報活動を行うこと。

3、入所者が故郷に帰れるよう、
(1)全般的な生活支援と十分な医療の保障
(2)住居の確保・親族関係の調整等の受け入れ体制の整備
を行うこと。

4、療養所内の遺骨を、故郷の墓地に帰し、手厚く弔うための取り組みを行うこと。