●040730大阪高裁 h15(ネ)2503 敷金返還請求、特優賃(特定優良賃貸住宅)法
●裁判長 小田耕治 裁判官 山下満、下野恭裕
●「退去跡補修費等負担基準」に基づく修繕費負担特約の成否,特約は特優賃貸法3条6号・特優賃貸規則13条もしくは民法90条に反し無効となる
●関係法条 民法601条,90条,特優賃貸法2条,3条,6条,20条,特融賃貸規則12条,13条,20条,特定優良賃貸住宅の供給の促進に関する運用について(運用通達),認定事業者が特定優良賃貸住宅の管理を行うに当たって配慮すべき事項(建設省告示)
●原審 030718 大阪地裁
h14(ワ)13367
●要旨 |
1 負担契約の成否について 2 負担契約の有効性について ◎ (時間の経過及び)使用収益による経済的価値の減損は賃料により補償されている関係にある。したがって,契約の本旨に従って目的物の使用収益をしている限り,原状回復義務の範囲は,特約がなければ,通常損耗分を含まないと解するのが相当である。本件負担特約は,この特約にあたる。 ◎ 特優賃貸法3条,特優賃貸規則13条などの供給計画の認定基準は,改善命令等の主要な判断基準となるから認定後も認定事業者の行為規範となっている。特優賃貸法13条は,家賃及び3か月を超えない額の敷金の受領を除き賃借人の不当な負担となることを賃貸の条件としてはならないと定めるが,原状回復義務に関する民法の解釈(注:通常損耗分の原状回復義務は負わないことが判示されている)を前提に,特優賃貸法の枠組み(注:目的,法の要点,助成措置,認定を受けた供給計画に従って建設及び管理が適正に行われるように各種の措置がなされること,家賃限度額の設定,配慮事項,認定基準,特優賃貸住宅契約によるべきとの運用通達などを判示している),特優賃貸法制定前後の国会審議の状況(注:標準契約書が特優賃貸住宅の賃貸借契約についても妥当するとの答申,ガイドラインによるべきとの答申などを判示している),住宅金融公庫法における規制内容(注:17条1項3号,35条,施行規則10条を挙げている)及びその解釈の実情(注:住宅金融公庫作成の「賃貸住宅経営上のご注意」を挙げている)等を総合考慮すると,通常損耗分の原状回復義務を賃借人に負わせることは,同条項の「不当な負担」に当たると解するのが相当である(注:民法90条違反とするので,特優賃貸法違反13条の効力について踏み込んでいない)。 ◎ そして,通常損耗分の原状回復義務を賃借人が負わないとの解釈は,立法・行政の分野でも是とされているのであり,現に平成14年6月には大阪府建築都市部住宅まちづくり政策課長からの具体的な通知もされているところであるから,公法人であり,勤労者の適正な住宅の利用が確保され賃貸料が適正なものとなるように勤めなければならない被控訴人としては(注:地方住宅供給公社法22条などが挙げられている),この解釈に沿うように努めることが要求される。さらに,被控訴人は,住宅を必要とする勤労者との関係で優越的な地位にある。このような立場にある被控訴人が,通常損耗分を賃借人に負担させることを内容とする契約書を一方的に定め,賃借人に対して不当な負担をさせることは,上記立法・行政における動向などをも考慮すると,遅くとも数次の契約期間の更新を経た平成14年6月ころ(注:大阪府からの通知)には,特優賃貸法等の規制を著しく逸脱し,社会通念上も容認し難い状態になっていたと認めるのが相当であるから,その限度で本件負担特約は公序良俗に違反し無効になるというべきである。 ◎ 本件負担特約がどちらか一方に偏したものではなく,不当な負担にあたらないとの被控訴人の主張は採用できない。リフォームは,原状回復を超えて経年変化を回復させ賃貸人に賃貸物件の価値の上昇をもたらすものであって,その経費を賃借人に負わせることは,賃貸人に当初の投資以上の利益を享受させるものであって,被控訴人が特優賃貸法の適用を受ける限り到底容認できない。家賃限度額が償却期間中の平均的修繕費を含んだ金額であることは特優賃貸法上も明らかであり,具体的な家賃額がこれを下回っていたとしても,修繕費部分のみを控除して家賃額が算定されたと考えることはできず,家賃限度額の範囲内で法定した家賃額に通常損耗分をも含めて本件補修費全額を上乗せすること自体が不当であることは論を待たない。 ◎ その他,通常損耗分に係る原状回復費用を詳細に認定し,被控訴人が敷金から控除した補修費用のうち,合計20万4648円は通常損耗分に係るもの,又は原状回復とは関係のない費用と認定。 |
→ |
|
※要旨は、検索の便宜のためのもので、内容に責任は持ちません。 |