●050224東京地裁
東京地裁_平成15年(ワ)第20170号 損害賠償請求事件(平成17224日言渡)
裁判官 貝阿彌 誠、水野有子、堀内元城(14部)
代理人 荒井哲朗

●海外通貨先物オプション取引、訴え取下げと和解契約の無効

◎ 被告■は,金のいわゆるペーパー商法で社会問題に発展したTに銀座営業部支店長として勤務した後,同会社と類似した営業を行う「H」という名称の会社を設立し,さらに,昭和5910月,海外金融先物取引会社「A」を設立して同社の社長となったが,昭和611126日,先物取引の保証金名目で顧客から金員を詐取したとして逮捕され平成2125日,東京地方裁判所で懲役7年の実刑判決を受けて服役した経歴を持つ。

◎ ■及び■は,A弁護士に2400万円を和解金額とする和解の申入れを拒否されていたにもかかわらず,高齢の女性で理解能力及び判断能力が低く本件訴訟の状況や見通しを知らない原告の無思慮に乗じて,判決言渡しの2日前に,原告の入院する病院まで押しかけ,訴えを取り下げてくれるなら直ちに500万円を支払うなどと甘言を弄するなどして,本件解任届を受け取って原告の利益擁護者といえるA弁護士から本件訴訟の代理人としての権限を剥奪するとともに,本件和解書2(上記2400万円よりも400万円低い2000万円を和解金額とし,しかも分割払いとするものである。)及び本件訴え取下げ同意書を取り付け,原告に代わって■自らが当裁判所に本件訴え取下げ同意書を提出したものであって,かかる行為は訴訟上の信義に著しく反するものというべきであり,そのような行為によってもたらされたものというべき本件訴え取下げを有効と見ることは著しく正義に反する。したがって,本件訴え取下げは無効というべきである。

◎ 原告は,長く専業主婦として生活してきた者であり,本件取引当時,80歳と高齢で,証券取引の経験はあったものの,商品先物取引やオプション取引の経験は全くなく,オプション取引の仕組みをよく理解するだけの能力がなかったことなどに照らすと,原告は,オプション取引(オプション転売取引を含む。)のように,複雑で容易に理解できず,賭事に近い性質を持つ極めて危険性の高い取引には,およそ不適格な者であったというべきであり、本件取引の勧誘行為は注意義務に違反した違法なものというべきである。

◎ 過失相殺を認めず、本件取引による損失合計33664439円から和解金として原告に支払われた合計800万円を控除した25664439円と弁護士費用350万円を認容。

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