●190314 大阪高裁 リフォーム工事契約に求められる法定書面
●大阪高裁 平成30年(ネ)第2206号 損害賠償本訴、同反訴請求控訴事件
●裁判官 石井寛明、小倉真樹、林潤(第12民事部)
●代理人 島村美紀
●原審 大阪地方裁判所 平成29年(ワ)第2817号 損害賠償請求本訴事件
大阪地方裁判所 平成29年(ワ)第5579号 損害賠償請求反訴事件
●要旨
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1 事案
本訴事件は、被控訴人宅建物の外壁等の塗装工事に係る請負契約に関し、請負人である控訴人が、注文者である被控訴人に対し、主位的に、民法641条に基づく損害賠償請求、予備的に、同契約に基づく残代金の支払請求及び債務不履行(受領遅滞)に基づく損害賠償請求等を求めた事案である。
反訴事件は、被控訴人が、控訴人に対し、@主位的に、特商法9条1項(平成28年法律第60号による改正前のもの。以下同じ。)に基づき上記請負契約を解除したと主張して、解除に基づく原状回復請求として125万円及びうち120万円に対する代金受領の日である平成28年9月5日から、うち5万円に対する解除の日である同月14日から各支払済みまで商事法定利率年6分の割合による法定利息の支払を求め、その他、A不法行為に基づく損害賠償請求、B瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求等を求めた事案である。
2 原審
(1)本訴事件
控訴人(本訴原告、反訴被告)の請求をいずれも棄却した。
(2)反訴事件
特商法9条1項による解除(法定書面不備を理由とするクーリング・オフ)に基づく原状回復請求として120万円及びこれに対する平成28年9月5日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による法定利息の支払を求める限度で被控訴人の前記@の請求を認容し、被控訴人のその余の請求をいずれも棄却した。そこで、控訴人が上記敗訴部分を不服として控訴した。控訴審においては、反訴事件における被控訴人の前記A及びBの各請求の当否は判断の対象となっていない。
3 争点(控訴審)
被告による本件請負契約@(原告・被告間における、平成28年6月5日、被告の自宅において、原告が被告の自宅の外壁及び屋根等の塗装工事を請負代金420万円、工期同年8月20日から同年9月20日までとの条件で請け負う旨の契約。以下同じ。)の特商法9条1項に基づく解除の可否
4 控訴審
(1)控訴人の請求を棄却。
(2)判示内容
ア 法定書面の記載事項として、特商法4条1号は「商品若しくは権利又は役務の種類」を定めているところ、権利又は役務において「種類」とは、当該権利又は役務が特定できる事項をいい、その内容が複雑な権利又は役務については、その属性に鑑み、記載可能なものをできるだけ詳細に記載する必要があると解される。本件契約書には、「工事名称」として「外壁塗装・屋根塗装工事」と記載され、さらに「工事内訳」として「外壁塗装工事 GAINA 4工程 272u」「ペンキ塗装工事 ニッペファインウレタン 2工程 一式」「屋根塗装工事 GAINA 4工程 183u」「屋根足場 急勾配」「室内塗装工事 2箇所 写真@、A」と記載されているが、当該記載のみでは、塗装工事や付随する工事の具体的内容や範囲について、必ずしも明確ではなく、特に、前記1?エで認定したとおり、本件請負契約@において、外廻りペンキ塗装工事は、被告の自宅建物の玄関ドア、入口ドア、ガレージドア、勝手口ドア、破風、雨樋、樋かくし、ガラリ、フラワーポット鉄板、フード、窓枠、ベランダ手すり、ベランダ笠木、裏鉄柱、面格子、ガレージシャッター、外塀柱まわりの塗装工事が含まれているところ、本契約書には、単に「ペンキ塗装工事 ニッペファインウレタン 2工程 一式」とだけしか記載がなく、この記載のみでは、外回りペンキ塗装工事の内容が明確ではないと言わざるを得ない。したがって、本件契約書、本件打ち合わせシート及び本件約款の記載のみでは、「商品若しくは権利又は役務の種類」の記載があったということはできない。
この点、控訴人は、ペンキ塗装工事は、外壁塗装工事に付随する細目的な工事であって、契約内容の特定に不可欠なものではなく、また、着工前に具体的な塗装箇所を特定することも困難であるから、「一式」との記載でも契約内容の特定として許される旨主張する。
しかし、ペンキ塗装工事は建物の外構部分の塗装に関するものであるところ、その内容や範囲は建物全体の外観等に影響を及ぼすものと思われること、本件確認書は、その内容・体裁に照らせば、本来、工事の完了状況を確認するために作成されるべき文書であると認められるところ、その工事内容欄に「外壁塗装」「屋根塗装」と並んで「外廻りペンキ」との名称でペンキ塗装工事が独立の項目として設けられ、その具体的な塗装箇所が不動文字を丸印で選択する方法及び手書きによる書込みの方法によって明示されていることからすると、ペンキ塗装工事の具体的内容が契約内容の特定のために不必要であるということはできない。また、控訴人が本件確認書を作成したのは、着工の約3か月前にされた本件契約書の写しの交付と同時期であったことが認められるから、着工前に具体的な塗装箇所を特定することが困難であったともいえない。したがって、控訴人の上記主張は採用できない。
イ 特商法5条1項が法定書面の交付を義務付けた趣旨は後日の紛争防止にあり、この同条項の趣旨に照らせば、購入者等に交付された法定書面それ自体によって契約内容等が明らかとなることが必要であり、書面交付時の口頭説明によって補われれば足りると解するのは相当でない。 |
以上 |
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