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1997年 神戸新聞掲載『くらしの法律相談』

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「神戸弁護士会模擬裁判」神戸新聞 1997年6月5日掲載

執筆者:亀井 尚也弁護士

神戸弁護練士会は、二十一日に市民参加の模擬陪審裁判を行います。「敷居が高い」とも言われる司法の在り方を考え直そうという試みです。今回は、陪審制について解説してもらいます。

質問者:陪審制とは何ですか。

弁護士:陪審制といえばアメリカの映画によく出てくるように、市民から選ばれた陪審員が被告の有罪、無罪を決める制度です。

質問者:日本では陪審裁判が実施されたことはないのですか。

弁護士:あまり知られていませんが、戦前の一時期に陪審制が行われていたこともあったのです。戦争で廃止になったのですが・・・。

質問者:最近になって陪審制を復活させようという声が出ているのですか。

弁護士:そうですね。まだ議論が高まっているとまでは言えませんが、現在のようにエリートの職業裁判官がすべてを決めるやり方がよいのかどうか、国民がもっと裁判手続きの一端を担う方が国民主義に合うのではないか、という議論も強まってきています。

質問者:裁判の素人が有罪や無罪を決めて大丈夫でしょうか。

弁護士:一人で結論を出すのではなく、陪審員十二人で評議をつくすということが、一つのポイントです。また、陪審員選定手続きといって、裁判官、検察官、弁護人から陪審員候補者にいろいろな質問をし、予断と偏見のない人を陪審員に選び出す手続きもきちんと用意されています。

質問者:陪審員は、裁判の知識がなくても務まるのですか。

弁護士:裁判の進行はすべて裁判官がリードし、陪審員の役割や、裁判の争点など分かりやすく説明します。また、それぞれの証拠について、適法な証拠として裁判に使っていいのか、というような法的な判断も裁判官が行います。このように交通整理は裁判官がちゃんとやってくれますから、陪審員は証拠を見聞きし、実際にどういう事実が起こったのかを、みんなで評議し確定する役割に専念すれば十分なのです。

質問者:今度、神戸弁護士会で模擬陪審裁判が行われるそうですね。

弁護士:はい。二十一日午後一時から午後五時まで、神戸弁護士会=神戸市中央区橘通=の講堂で行います。実際に起こった事件を素材にして、市民から陪審員を募って模擬裁判を行います。傍聴も自由です。市民の皆さんとともに、市民参加の司法の在り方を考える企画にしたいと思っています。