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1999年 神戸新聞掲載『くらしの法律相談』

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「父親が借金残して死亡 相続放棄の手続き可能」神戸新聞 1999年4月16日掲載

執筆者:柴田 眞里弁護士

今回は長い間、音信不通だった父親が多額の借金を残して亡くなったという女性からの相談です。唯一の実子であるこの女性に、借金を支払う義務があるのでしょうか。

相談者:裁判所から亡父の借金一千万円を支払えという書類が送られてきて困っています。

弁護士:詳しく話してもらえますか。

相談者:私の両親は離婚後、長崎で生活していたのですが、私が十歳の時に離婚しました。その後、母が女手ひとつで私を育ててくれました。父とは三十年間まったく連絡がありませんでしたが、去年八月末に借金を残して死んでしまったのです。

弁護士:お父さんが亡くなったのをいつ知ったのですか。

相談者:去年九月に父の遠縁にあたる人から連絡がありました。三十年会っていないといっても実の父ですから気にはなりましたが、一度も長崎に行かないままでした。それが最近になって書類が送られてきて、父が借金を残していたことを初めて知ったのです。

弁護士: お父さんには他に子どもがいましたか。

相談者:父は再婚もせず、ずっと一人暮らしだったようです。子どもは私一人だけです。

弁護士:そうするとお父さんの相続人はあなた一人ですね。相続人は被相続人のプラスの財産だけでなく、マイナスの財産、つまり借金もすべて相続することになっています。あなたもお父さんの残した借金を支払わなければならないのが原則です。

相談者:何か方法はないのですか。

弁護士:家庭裁判所で相続を放棄する手続きを取ることが考えられます。そのためには、自分が相続人となったことを知った時点から三カ月以内に申し立てなければなりません。

相談者:私は昨年の九月に父が死んだことを聞いていますから、無理ではありませんか。

弁護士:確かにその点は問題になります。しかし、被相続人と長年交渉がないなどの理由があって借金の存在を知らず、申し立てが遅れた場合には、例外的に相続放棄を認める裁判例があります。あなたも例外にあたる可能性がありますので、さっそく手続きをとりましょう。