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1999年 神戸新聞掲載『くらしの法律相談』

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「裁判による離婚手続き まず調停の申し立てを」神戸新聞 1999年8月27日掲載

執筆者:中嶋 展也弁護士

妻と別居中の男性が、他の女性を入籍したいと相談に訪れました。そのためには現在の奥さんとの離婚が前提になりますが、手続きや金銭的な問題はどうなるのでしょう。

相談者:三十八歳、自営業です。 親の紹介で十年前に見合い結婚しましたが、三十歳のときに家出しました。子供もいないので、ほとんど家には帰っていせん。同棲相手の女性を籍に入れてやりたいと思うのですが可能でしょうか。

弁護士:家出の理由は何だったのですか。

相談者:私の女性関係が原因で妻とのけんかが絶えず、家に居づらくなり、結局飛び出しました。それ以外にもいろいろありましたが、結婚当初から妻に対して今ひとつ愛情を感じられなかったのは事実です。家出してしばらくはアパートに1人住まいをしていましたが、その後は現在まで相手の女性と同居しています。

弁護士:あなたの浮気が原因だとすれば、ずいぶんと身勝手な話ですね。奥さん気持ちを考えると、とてもあなたには同情できません。ただ、夫婦の実態がすでに8年間も失われているのであれば、婚姻関係は修復不可能なほどに破たんしていると言えますので、離婚自体は必ずしも不可能ではないと思います。

相談者:そうですか。具体的にはどうすればいいのでしょうか。

弁護士:双方の合意に基づく協議離婚が不可能であれば、裁判による離婚という方法があります。ただ、いきなり離婚の訴訟を起こすことはできません。まず家庭裁判所に調停を申し立てる必要があります。とりあえず夫婦間で話し合いをしてみて、それでもだめなら裁判に訴えなさい、という趣旨ですね。

相談者:家出してから今まで収入の半分を生活費として渡してきましたが、もし離婚が認められれば、妻に対してさらにお金を支払う必要が出てくるのでしょうか。

弁護士:あなたの浮気が離婚のそもそもの原因であるとすれば、当然のことながら、あなたは奥さんに対して相当額の慰謝料を支払わなくてはなりません。また、それ以外にも財産分与と言って、夫婦で築き上げた共有財産を精算しなければなりません。

相談者:二重生活を続けてきましたので、特にこれといった財産はありませんが、妻にはできる限りのことをしてやりたいと思います。決して妻を見捨てるつもりはありません。

弁護士:おや、ずいぶん殊勝なことを言われますね。当分の間、奥さんが生活に困らないように、慰謝料について最大限の配慮をするというお気持ちがあるのでしたら、私も弁護士として、奥さんとの交渉を引き受けないでもありませんが・・・

相談者:すべてを捨ててゼロからやり直す覚悟ですので、どうか力を貸して下さい。

弁護士:いま言われたことを、どうか忘れないで下さい。