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2001年 神戸新聞掲載『くらしの法律相談』

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「盗難車の事故-相談者に損害賠償責任も」神戸新聞 2001年6月20日掲載

執筆者:吉田 裕樹弁護士

自動車で帰宅途中、コンビニで買い物をしようとエンジンを掛けたまま駐車場に駐車し、ほんの数分間自動車を離れたすきに、自動車ごと盗難に遭いました。その直後、自動車盗の犯人は、私の自動車を運転し、歩行者をはねてケガを負わせてしまいました。被害者は、自動車の所有者である私に損害賠償を求めています。私に損害賠償に応じる義務はるのでしょうか?

弁護士:自動車盗の犯人が事故を起こした場合(泥棒運転事故)、原則として自動車の所有者が被害者に対して損害賠償責任を負うことはありません。
しかし、所有者が自動車の管理・保管を怠っていたような場合には、例外的に自動車損害賠償保障法3条の「運行供用者」として損害賠償責任を負うことがあります。

相談者:例外的場合に該当するか否かは、どのように判断されるのですか?

弁護士:(1)自動車の管理状況(施錠の有無、エンジンブレーキを抜いておいたかなど)(2)自動車の駐車場所(第三者が自由に立ち入れる場所かなど)(3)盗難に遭ってから事故が発生するまでの時間的・場所的隔たり(盗難に遭ってからすぐに事故が起きたかなど)の事情を総合的に考慮して判断されます。

相談者:今回の場合、私は運行供用者として損害賠償責任を負いますか?

弁護士:エンジンを掛けたまま第三者が出入り自由な駐車場に駐車していたこと、盗難直後に事故が発生していることからすると、相談者が運行供用者として損害賠償責任を負うと判断される可能性は高いですね。

相談者:そうですか…。でも今回の場合、私は自動車を盗まれたのであって、ある意味被害者です。なのに損害賠償責任を負うというのは、何かふに落ちない気がします。悪いのは泥棒運転事故を起こした犯人ではないのですか?

弁護士:確かに、一番悪いのは犯人です。ですから、犯人がケガをした被害者に対して損害賠償責任を負うのは当然です。しかし、犯人損害賠償責任が認められるからといって、相談者が被害者との関係で損害賠償責任を免れることにはなりません。