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2001年 神戸新聞掲載『くらしの法律相談』

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「交通事故の慰謝料-被害者と親の二重取り無理」神戸新聞 2001年12月4日掲載

執筆者:松岡 英和弁護士

娘が交通事故で顔に大きな傷を負ったのですが、治療費以外に何か請求できないでしょうか。

弁護士:慰謝料が請求できます。慰謝料とは、他人の不法行為によって生じる精神的苦痛に対する損害賠償のこと。財産以外の損害、すなわち精神面の損害を慰謝する点に特徴があります。

相談者:法律はどのように規定していますか。

弁護士:民法711条によると、他人の生命を害した者は、被害者の父母、配偶者、子に対して慰謝料を支払う義務があるとされています。

相談者:死亡でないと、加害者に慰謝料を請求できないのですか。

弁護士:最高裁判例によると、被害者の生命が奪われなくても生命が奪われた場合に比肩すべき精神的苦痛を近親者が被った場合には、慰謝料を請求できるとされています。

相談者:私の場合、生命侵害に比肩すべき精神的苦痛と言えますか。

弁護士:娘さんの傷の程度にもより、一概には言えません。最高裁の基準は抽象的なもので、現に、最高裁や下級審の判決の間でも大差のない事例でありながら結論を異にするものもあります。

相談者:私の慰謝料請求と娘の慰謝料請求との関係はどうなるのですか。

弁護士:親と被害者である子の双方が慰謝料を得たら、二重取りになるとして、親の慰謝料請求を認めなかった判例があるので、お嬢さんが慰謝料を得たなら、あなたの方は難しいでしょう。

相談者:法律によると、被害者の父母、配偶者、子が慰謝料を請求できるわけですが、きょうだいは請求できないのですか。

弁護士:祖父母、孫、兄弟姉妹、内縁の配偶者、未認知の子、おい、めい、義理の父母、養父母の慰謝料請求が認められた例があります。

相談者:慰謝料を請求できる者の範囲が広がってきているわけですね。

弁護士:ただ先ほど述べた関係があれば、直ちに慰謝料請求が認められるわけではありません。むしろ被害者と慰謝料を請求する者との実質的な関係が父母、配偶者、子に匹敵するような緊密なものである必要があります。そうでないと、あまり悲しんでいない遠縁の者からの慰謝料請求がなされ、不合理ですから。