アーカイブス

このページは旧サイトに掲載されていた記事のアーカイブです。

くらしの法律相談

HOME > くらしの法律相談(1997年-2007年) > 2007年 神戸新聞掲載『くらしの法律』相談 > 「帰国した米国人夫との離婚-状況次第で日本で裁判可能」神戸新聞 2007年6月19日掲載

2007年 神戸新聞掲載『くらしの法律相談』

≪2007年掲載一覧へ戻る

「帰国した米国人夫との離婚-状況次第で日本で裁判可能」神戸新聞 2007年6月19日掲載

執筆者:佐々木 伸弁護士

Q:米国人の夫のことです。5年前に結婚した後、日本で一緒に生活してきましたが、3か月前、「交際している女性がおり、離婚したい」と言い出し、私と3歳の子どもを残して帰国しました。以後、生活費すら渡してもらえません。私も離婚したいのですが、日本で離婚裁判を起こせますか。

A:結論から言いますと、日本での裁判は可能です。

しかし、裁判には時間も費用もかかるので、まずは両者の協議で離婚ができるか検討しましょう。

この点については、米国に現在居住している米国人の夫を相手とする離婚問題でも、あなたが日本に住む日本人ならば、日本の民法が適用されます。仮にあなたが結婚を機に米国籍を取得していても5年間日本で夫婦生活を送っていたということなので、やはり日本の民法が適用されます。

日本の民法は協議離婚を認めていますので、協議が調えば、裁判によらずに離婚ができます。もっとも、あなたも夫も離婚自体には同意しているものの、あなたのもとに子どもがいたり、夫が交際している女性の存在を理由に離婚を求めていたりという事情がありますので、養育費や慰謝料の額で協議が調わないことも十分想定できます。

協議が調わなければ、日本の法律では、原則として調停を経て裁判に移行することになります。しかし、日本の裁判所でこの手続きをするなら、夫の来日が不可欠です。果たして日本の裁判所で調停や裁判ができるかは、日本の民法が適用されるということとは別に検討する必要があります。

しかし、この点についても、夫があなたに対する扶養義務を怠った(遺棄)とか、これに準ずる状況があれば、夫よりもあなたの便宜を図る方が公平と言えますので、日本の裁判所で調停や裁判ができるという最高裁の判例があります。

今回のケースでは、生活費すら渡してもらえない状況で、遺棄またはこれに準ずる状況であるとされる可能性は高いでしょう。そうすると、日本の裁判所で調停や裁判ができるということになりますので、冒頭で述べましたように、日本で裁判を起こすことは可能です。