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くらしの法律相談(2008年-2016年)

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2008年 神戸新聞掲載『くらしの法律』相談

不公平は遺産分与-共同相続人に賠償請求も 神戸新聞 2008年10月7日掲載

執筆者:大削 武雄弁護士

Q:母の相続の際、兄3人と遺産分割協議をしましたが、私が遺産として取得した不動産が実は他人の物であったことが分かりました。私は兄らに何かいえるのでしょうか。
なお、兄のうち1人は遺産分割後、破産をしており資力がありません。

A:ご質問のように、遺産分割で取得した不動産が、実は遺産に属さず他人の物であった場合、あなたはそれを取得することができません。
 しかし、それではあなたとほかのお兄さまとの間で不公平が生じます。
このような場合、民法は、「各共同相続人は、ほかの共同相続人に対して、売り主と同じく、その相続分に応じて担保の責任を負う。」(911条)として、相続人間の不公平を是正しています。
 そこで、あなたは、ほかのお兄さまに対し、具体的相続分に応じて損害賠償を請求することができます。
例えば、3人のお兄さまをA、B、Cとし、各自の相続分を4分の1ずつとします。
あなたが遺産として取得した不動産が1200万円だった場合、あなたは、A、B、Cに300万円ずつを請求することができます。
 もっとも、本件のように資力のないお兄さま(例えばA)がいる場合、
仮にあなたが請求しても効果がありません。
しかし、あなただけがAの無資力を負担するのは公平であるとはいえません。
そこで、公平の観点から、民法では相続人中に担保責任をとる資力がない者がいるときは、この者の負担すべき部分は、ほかの共同相続人全員が相続分に応じて負担するとされています(民法913条本文)。
つまり、Aが負担すべきであった300万円について、あなたとB、Cの3人で分担することになります。
これによってBとCに対し、100万円ずつ請求することができ、結局前の300万円を含めて、BとCに400万円ずつ請求することができます。
 このほかにも、すでに行なった遺産分割協議を解除して、本来の遺産の再分割を求めることも可能です。(ただし、解除を制限する考え方もあります)
 なお、以上について、被相続人であるお母さまが遺言で別段の意思を表示した場合には、それに従う(民法914条)ことになります。