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くらしの法律相談(2008年-2016年)

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2009年 神戸新聞掲載『くらしの法律』相談

家賃2カ月滞納で解約-入居後の経緯、事情を考慮 神戸新聞 2009年1月6日掲載

執筆者:高橋 弘毅弁護士

Q:仕事が忙しく、家賃の振り込みを忘れていたところ、大家さんから、契約の解除に伴い借家を明け渡すよう
通知が届いた。
これまで家賃を滞納したことはないが、うっかり2ヵ月分の支払いを忘れただけで解除されてしまうのか。

A:多くの賃貸借契約書には、「賃料を一度でも滞納した場合」あるいは「滞納賃料が2ヵ月分以上に達した場合」には、賃貸借契約を解除することができると記載されています。
このため、今回のあなたのように賃料を2ヵ月分滞納した場合、賃貸人や管理会社から賃貸借契約の解除通知が送られてくることは、決して珍しいことではありません。
 問題は、このような賃貸人からの解除が有効かということです。
 この点について、法および裁判例は、賃借人の生活の拠点を保護するという観点から、(1)賃料不払いの期間が「一定期間」にわたること(2)無催告でも解除できるのとの特約を定めていない限り、解除の効力が発生するまでに、滞納賃料の催告(請求)をし、滞納解消の機会を与えることを求めています。
 (1)の「一定期間」とは、賃貸借契約関係の信頼関係が破壊されたと認められる程度の期間を意味するとされており、その判断は、個別事案ごとにこれまでの経緯や債務不履行の状況などの事情が考慮されることになっています。
 したがって、賃料の滞納以外に過去に滞納歴がある場合や用法違反など債務不履行にあたるような事情がある場合などは、短期間でも「一定期間」の要件を満たすと判断されることがあります。
 今回のあなたの場合、大家さんからの催告があったことを前提として、賃料滞納の状況、滞納額、使用状況、用法違反、これまでの大家さんとの関係など様々な事情を考慮して、2ヵ月分の滞納が「一定期間」の滞納と認められる場合は、大家さんの解除が有効と認められることになりますし、「一定期間」の滞納と認められない場合は、大家さんの解除が有効と認められないこともあります。