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くらしの法律相談(2008年-2016年)

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2015年 神戸新聞掲載『くらしの法律』相談

父と不倫相手に慰謝料を請求したい-母親が被った損害分は可能 神戸新聞 2015年7月15日掲載

執筆者:金井 周一郎弁護士

Q:昨年亡くなった母は、一昨年から父とは別居していました。原因は父の不倫でした。私は父も不倫相手も許すことができません。慰謝料請求できるでしょうか。

A:慰謝料請求とは、お父さんと不倫相手が不倫関係にあったことによって、あなたやお母さんが受けた精神的損害を請求する権利です。お父さんや不倫相手に慰謝料請求するに当たっては、あなた自身の精神的損害と、お母さんの精神的損害をあなたが請求できるかという点で区別して考える必要があります。
まず、あなた自身の精神的損害に基づく慰謝料請求については、お父さんと不倫相手が不倫関係にあったとしても、それだけでは、慰謝料を請求できません。最高裁判所は、子が不倫相手に対して慰謝料請求を行った事案で、不倫相手が害意(相手に危害を加えようとする心)をもって親の子に対する監護(監督し保護すること)などを積極的に阻止するなどの特段の事情がない限り、子に対する不法行為には該当しないと判断しています。慰謝料請求が認められるには、そのような事情が必要となります。
一方、不倫によってお母さんが被った精神的損害に基づく慰謝料請求は認められています。そして、最高裁判所は、慰謝料請求権は単なる金銭債権であるとして相続することを認めていますので、あなたは、相続分に応じて、お父さんと不倫相手に対するお母さんの慰謝料請求権を相続することが可能です。
もっとも、お父さんと不倫相手に対して慰謝料請求する場合、お父さんと不倫相手との不倫関係などを証明する必要があります。写真やメールなど、父親と不倫相手との不倫関係を立証する資料が必要となります。
また、慰謝料請求するにあたって時効の問題や夫婦間の婚姻関係が既に破綻していたなどの争いが生じる可能性もあります。
このように、父親と不倫相手に対して慰謝料を請求するとしても、個別具体的事情に基づきさまざまな問題が生じますので、一度、兵庫県弁護士会にご相談ください。