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くらしの法律相談(2008年-2016年)

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2015年 神戸新聞掲載『くらしの法律』相談

パソコンで作成した遺言は無効か-死因贈与として有効の場合も 神戸新聞 2015年12月16日掲載

執筆者:小林 優太弁護士

Q:父は、パソコンで作成し、署名押印した遺言を残していました。私に財産をすべて相続させる内容で、生前に父から見せられていました。この遺言が、法律的に問題があるとは知りませんでした。無効でしょうか。

A:お父さんの遺言は、遺言としては無効ですが、死因贈与として有効となる可能性があります。
通常の遺言の方法には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。作成方法については、民法が厳しいルールを設けています。
まず、公正証書、秘密証書の遺言作成には、公証人の関与が必要となります。そのため、お父さんの残したものは、該当しません。
では、お父さんの遺言には、自筆証書の作成ルールと照らし、どのような問題があるのでしょうか?
自筆証書は、遺言の全文、日付、氏名を自筆で書き、押印することが必要です。しかし、お父さんの遺言は、パソコン入力された内容をプリントアウトしているので、全文を自筆で書いたとはいえません。したがって、自筆証書の作成ルールをクリアしておらず、遺言としては無効です。
もっとも、お父さんの遺言は、贈与者の死亡によって効力が生じる契約、死因贈与として有効になる可能性があります。死因贈与には、遺言のような厳しい作成ルールはありませんので、贈与の内容をすべてパソコン入力してもさしつかえありません。ただ、死因贈与は契約ですので、贈与される側(相談者)の承諾が必要となります。
今回のケースでは、相談者が、「財産をすべて譲り受けること」を承諾していたと認められる場合、お父さんの遺言は、死因贈与として有効となります。
なお、死因贈与として有効であっても、お父さんの財産をすべて相談者に譲り渡すという内容であるため、他の相続人が最低限の相続確保のため、死因贈与の一部は無効と主張する可能性があります。これは、遺留分減殺請求といいます。遺言にはいろいろなルールがありますので、分からない点があれば、兵庫県弁護士会にご相談ください。