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2017年

公演チケットをネットで転売したい-利益を上げる行為は避ける-

 神戸新聞2017年3月15日掲載
執筆者:田中 陽平弁護士

 私は、アイドルグループのコンサートに行こうと思い、チケットを購入しましたが、急きょ行けなくなりました。インターネットで転売しようと思いますが、何か問題はありますでしょうか?

 昨年9月、あるアイドルグループのコンサートチケットを転売したとして、女性が古物営業法違反(無許可営業)の疑いで逮捕された、というニュースがありました。

 「古物営業法」では、金券ショップなどの「古物営業」をするには、公安委員会の許可が必要とされています。どのような場合に許可が必要かは、警視庁ホームページで確認できます。

 さて、この事例は「個人が、急きょ行けなくなったコンサートのチケットをネットで転売しようとする」場面です。どのような法的問題があるのでしょうか。個人が1度だけチケットをネットで転売したからといって、直ちに無許可営業として問題になるわけではありません。

 しかし、チケット転売の際、「購入価格(定価)より転売価格を高くすること」は控えた方がよいでしょう。なぜなら、それはほどんどの場合、コンサート主催者側の意思に反するからです。チケットの裏側などに「規約」として「転売目的での購入禁止」の定めがある場合、もし転売によって利益を上げると、それは“転売目的の購入であった”と評価され、コンサート主催者側との関係で契約違反となる可能性があります。

 最近、音楽業界からはチケット高額転売への反対声明が出されました。実際、①会員登録の厳格化(多重登録の防止など)②不正購入情報の共有③電子チケット導入による本人確認の厳格化④一度購入されたチケットを主催者側が再度販売するサービスの順次導入―が検討されているようです。このような状況下では特に、チケット転売で利益を上げる行為は控えるべきでしょう。転売行為が反復・継続すれば、古物営業法違反になる可能性もあります。自分がコンサートに行けなくなったので、せっかく買ったチケットを家族や友人に「無償であげる」ことは問題ありません。しかし、ネットでの転売には法的リスクが潜んでいることもありますので、事前に弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。

 

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