神戸新聞2025年12月3日掲載
執筆者:伊賀 義高 弁護士
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小学生の息子が、私の知らない間に、私(親)名義のスマートフォンを使って、アプリ内で数万円の課金をしていたことが分かりました。取り消しはできるのでしょうか。こうした事態に陥らないよう予防策も教えてください。
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18歳未満の未成年者が、親の同意を得ずに契約した場合、その契約は民法5条により取り消すことができます。親の知らないうちに子どもがアプリで課金したのであれば、契約の取り消しが認められて、返金される可能性があります。
取り消しを求める際は、実際に課金を行ったのが未成年者であり、親が同意していなかったことを証明する必要があります。課金履歴、利用状況、口座引き落としの記録など、未成年者がアプリで課金したことを証明できる資料をそろえましょう。
ただし、未成年者が詐術を用いたときは取り消しができません。詐術とは、子どもが自分は大人だとうそをつくことなどを言い、例えばオンライン上で「あなたは成人ですか?」という質問に「はい」と答えて契約したケースでも事情によっては詐術を用いたとされる可能性もあります。
また、親権者が課金を容認していたり、追認(事後承諾)したと判断される場合も取り消せません。気付いたら、直ちに取り消しの連絡をしてください。
アプリの場合、アップルやグーグルなどのプラットフォームのアカウントを通じてアプリ運営会社と契約を締結し、課金などの支払いはクレジットカードで支払うのが通常です。まずは子どもが使用したプラットフォームに取り消したい旨の連絡を入れましょう。返金に応じてくれない場合、アプリ運営会社に取り消しの意向を伝えてください。クレジットカードの運営会社にも連絡し、取り消しが認められるまで支払わないことを伝えた方が良いでしょう。
取り消しが認められたとしても、アプリで購入したアイテムなど現存している利益を返還する必要がありますので注意してください。
返金してくれないなど困っている場合は、消費生活センターや弁護士に相談してください。
予防策としては、プラットフォームに登録したID情報からクレジット情報を削除▽スマホにはクレジットカードの登録をしない-などが挙げられます。


