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意見表明(1998年-2010年)

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国選弁護人報酬についての要望書

2003年(平成15年)3月3日
最高裁判所長官 町田 顯 殿
財務大臣 塩川 正十郎 殿

兵庫県弁護士会 会長 藤野 亮司

要望書

 2002年12月24日の閣議で平成15年度の政府予算案が決定され現在国会で審議されていますが、政府予算案では、国選弁護人報酬については、地方裁判所3回開廷の1件あたりの報酬の基準を85,600円にすることとされています。平成14年度の86,400円から800円(0.9%)の減額になっています。このような減額は、戦後初めてのことです。

 わが国の刑事裁判における国選弁護事件の割合が75%を超えようとする状況になっている現在、日本国憲法によって保障された重要な基本的人権である被告人の弁護人依頼権(第37条3項)を実質的に保障するためには、国選弁護が充実することが必要不可欠であるといえます。従って、国選弁護人が十分な弁護活動ができるように適正な報酬が確保されなくてはならず、その費用は、適正な予算が国によって手当されなくてはなりません。

 しかしながら、国選弁護人の報酬は、従来から、国選弁護人の弁護活動にかかる時間・労力等に十分対応した額ではありませんでした。

 しかも、現在の制度のもとでは記録謄写料、交通費等の実費については一部裁量により認められているに過ぎないことから、事実上弁護人の持ち出しになっております。

 このような状況下で、国選弁護人は、十分な弁護活動をしようと努力すればするほど、実質的な持ち出しを余儀なくされております。

 従って、このような状況下での国選弁護人の報酬の減額は、一方的に国選弁護人に負担を強いるものであり、ひいては被告人に対する充分な弁護活動の障害となる危険性があります。

 更に、今、司法制度改革推進本部では、2006年度からの国費による被疑者弁護制の導入を前提に、検討作業が進んでいます。この制度の実現には、より多くの弁護士の確保が要請されており、そのためには適正な弁護人報酬の設定が不可欠です。被疑者段階を含めた弁護制度の充実のためにも、現在の国選弁護人報酬の適正額への増額の努力が続けられるべきです。今回の減額措置はそれに真っ向から反します。

 そこで、兵庫県弁護士会は、国選弁護人報酬の支給基準の減額に抗議するとともに、国選弁護人に対して適正な報酬及び弁護活動に必要な実費全額の支払がなされる措置を早急にとられるよう強く要望します。

以上