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意見表明(1998年-2010年)

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近畿司法書士会連合会の計画する「対話調停センター」の設立断念を求める会長声明

2004年(平成16年)7月14日
兵庫県弁護士会 会長 滝本 雅彦

 近畿司法書士会連合会は、この度、「近畿司法書士会連合会対話調停センター」(以下「同センター」という。)を設立するとの発表を行った。

 ところで、弁護士法第72条は、非弁護士が業として報酬を得る目的で代理、仲裁、和解その他の法律事務を取り扱うことを禁止している。

 近畿司法書士会連合会によれば、同センターは「対話を促進」することを志向し、断定的かつ裁断的な法的判断の提供は伴わないので、「法律事務の取り扱い」には該当しないとしている。

 確かに、いわゆるADRは裁判外紛争解決手段であって当事者の自立性を尊重した紛争解決を目指すものではあるが、同センターの手続主催者たる調停人が「対話を促進」する過程において、最終合意の段階で高度な法的判断が必要とされることは必至であり、調停人の所為は「法律事務の取り扱い」そのものであると言わざるを得ない。
 又、調停申立時に徴求する金額が5000円で実費相当額であることを理由に報酬を得る目的はないとしながら、事件を担当した調停人に対し、日当と実費を支払うこととされているのであって、これは「報酬」を支払うことであるから、これを受け取る調停人には「報酬を得る目的」があるといえる。

 更に、平成15年改正司法書士法は、第3条に司法書士が取り扱える業務を定めているが、そこにはADRの手続主宰者としての業務は含まれていない。司法書士には、金140万円を越えない係争物に関する簡裁代理権、相談、裁判外和解代理権が認められたが、これらの機能から、当然には、和解あっせんの仲介人(調停人)としての業務取扱権を導き出すことはできない。

 よって、当会は、同センターが弁護士法第72条に違反する疑いが極めて濃厚であると判断し、近畿司法書士会連合会に対し、同センターの設立断念を求めるものである。