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1997年 神戸新聞掲載『くらしの法律相談』

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「金銭貸借のトラブル-裁判所への申し立ても」神戸新聞 1997年9月4日掲載

執筆者:梶尾 節生弁護士

金銭の貸借をめぐるトラブルは後を絶ちません。解決法として裁判所を利用することもできます。今回は友人にお金を貸した人の相談です。

相談者:友人に利息の約束をせずにお金を貸したのですが、このときは、いつまでも利息を請求できないのでしょうか。

弁護士:利息支払いの約束がなければ、弁済期日までの利息は請求できません。ただ、商人間の貸借の場合は、この約束がなくても年六分の法定利息を請求できます。弁済期日の経過後も返済しないときは借主の債務不履行になりますから、弁済期日から支払い完済まで法定利息相当の損害金として年五分の遅延損害金を併せて請求できます(借主が商人のときなどは年六分)。

相談者:弁済期日の約束をしていないときは、どうなりますか。

弁護士:いつでも相当の期間を定めて、その期間内に返済するよう請求できます。その期間の経過したときが弁済の期限になります。

相談者:相当の期間とは、どれくらいですか。

弁護士:金額や借入日的などによって異なりますが、普通の場合には二週間もみておけば十分でしょう。

相談者:お金を貸した場合の時効期間は、どうなっていますか。

弁護士:貸金債権の消滅時効期間は民法上は十年ですが、貸主、借主の双方か商人である場合などは、商取引の迅速性から五年とされています。もっとも、時効期間中に裁判上の請求や借主の承認など民法の定める一定の事由があれば、時効は中断し、その事実がなくなったときから新たに時効が進行します。

相談者:借主がどうしても返済しないときのための、何か簡易な法的手続きはありませんか。

弁護士:借主の住所地を管轄する簡易裁判所に対し、支払い命令の申し立てをする方法があります。

相談者:訴訟と比べてどのようなメリットがあるのですか。

弁護士:裁判所は、貸主の申し立てに基づいて借主の事情を聞くことなく、支払い命令を発します。これに対し、借主が支払い命令送達の日の翌日から二週間以内に異議の申し立てをしないときは、貸主は仮執行宣言(強制執行を許すとの宣言)を得て、借主の財産に対し強制執行ができます。このように訴訟に比べると時間もかからず、費用も安くてすみますが、ただ、借主が異議申し立てをすると、通常訴訟手続きに移行しますから、事実関係に争いがあり異議申し立てが予想されるときは、最初から訴訟を提起されるほうがよいでしょう。