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1998年 神戸新聞掲載『くらしの法律相談』

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「妻と末娘に多くの遺産を-遺言で遺留分除いて指定」神戸新聞 1998年11月6日掲載

執筆者:鴇田 香織弁護士

遺産相続に自分自身の希望を反映させるには、どうすればよいでしょうか。

相談者:私は、今年七十五歳で、妻は七十三歳です。私たちには娘二人と息子一人がいますが、十五年前から末娘夫婦と同居しています。末娘夫婦は私たちの面倒をよくみてくれてますので、妻と末娘により多く遺産を残してやりたいのです。どのような方法がありますか。

弁護士:遺言で奥さんと末娘さんの相続分を指定すればよいでしょう。

相談者:どのように?

弁護士:遺言書には三種類あります。自筆証書、公正証書、秘密証書。このうちどれにするかを決めます。

相談者:どの方法が最も確実ですか。

弁護士:遺言の滅失や隠匿、偽造を防ぐことができ、死亡後の家庭裁判所での検認手続きも不要なことから、公証人に作成してもらう公正証書が最も確実です。証人二人以上(相続を受ける人やその妻、未成年者は除く)の立ち会いと遺言者の署名、実印の押印、印鑑証明書などが必要で、公証人の手数料もかかります。

相談者:随分、煩雑ですね。もっと簡単にしたいのですが。

弁護士:自筆証書は一人で作成できます。遺言者が遺言の全文、日付、氏名を自署し、署名の下に印鑑を押せば出来上がりです。ただし、遺言者の死後に家庭裁判所での検認が必要ですし、封印してあるときは、家裁で開封しなければなりません。

相談者:遺言で相続分の指定にあたってどのようなことに注意すればよいでしょうか。

弁護士: だれにどのような財産を相続させるかは遺言で自由に指定できますが、兄弟姉妹を除いた相続人には、被相続人の遺言に反しても一定の割合で相続できる権利が認められています。これを遺留分といい、法定相続分の各二分の一認められています。

相談者:私名義の財産は総額で約九千万円ですが、どのように相続分を指定すればいいのでしょうか。

弁護士:奥さんと子ども三人が相続人ですから、奥さんの遺留分は二千二百五十万円、三人の子の各自の遺留分は七百五十万円。従って二人のお子さんの遺留分千五百万円を除いた残りの財産を奥さんと末娘さんに指定するとよいでしょう。