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2000年 神戸新聞掲載『くらしの法律相談』

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「養子縁組 法定相続人の数には制限」神戸新聞 2000年3月10日掲載

執筆者:池田 和世弁護士

実子はいるが、節税のために養子縁組をしたいという相談です。だれを養子にすれば、どんなメリットがあるのでしょうか。また、養子にすることに対して、何か制限はあるのでしょうか。

相談者:養子縁組をすると相続税を節税できると聞いたもので、養子縁組をしようかと考えています。ただ、だれを養子にすればいいのかよく分からなくて・・・。

弁護士:なるほど。あなたの家族構成を教えていただけますか?

相談者:妻と長男夫婦、長女夫婦、それに長男夫婦の間の孫が二人、長女夫婦の間の孫が三人です。

弁護士:そうですか。それでしたら、節税対策としては、お孫さんを養子にされるのがいいと思いますよ。
お孫さんを養子にされます。と、(1)「法定相続人」といって、「法律上、あなたの相続人となられる方」の数が増え、節税になります。また、(2)あなたの財産を「一代とばしで」、つまり、お子さんをとばしてお孫さんに相続させることができますので、本来、相続税が二回かかるところを、一回かかるのみで済ませることができます。

相談者:はあ…、法律のことはうといのでちょっとよくわからないんですが。そもそも、私の法定相続人というのはだれになるんでしょうか?

弁護士:説明がいたらなくて失礼しました。あなたの奥さま、ご長男ご長女の三人です。お孫さんを養子にされますと、そのお孫さんも法定相続人に加わります。

相談者:法定相続人が増えることで、どのように節税になるんでしょうか?

弁護士:法定相続人が一人増えるごとに、(1)相続税の基礎控除額が一千方円引き上がりますし、また、(2)生命保険金や退職手当金などの非課税限度額か五百万円引き上がります。(3)法定相続人が増えると、適用される税率が低くなるという効果もあるんですよ。

相談者:それなら、孫を五人とも養子にしようと思います。五人も養子にすれば、かなりの節税になりますよねえ? 基礎控除額は五千万円引き上がりますし・・・。

弁護士:残念ながら、基礎控除額算定の際に、法定相続人として算入できる養子の数については制限があるんですよ。あなたのように実子がいらっしやる場合には、養子を一人しか算入できません。ですから、お孫さんを五人とも養子にされても基礎控除額は一千万円引き上がるだけですねえ。

相談者:ほかに何か制限があるんですか?

弁護士:養子の数が先ほどの制限内でも、「相続税の負担を不当に減少させる結果となると認められる」と、養子は基礎控除額算定の際に算入される法定相続人としてはカウントされません。ですから「相続税額を軽減するためだけの目的で養子縁組した」と誤解されないように注意して養子縁組する必要がありますよ。