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2000年 神戸新聞掲載『くらしの法律相談』

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「マンション敷金の返還-通常は家主に修繕義務」神戸新聞 2000年5月24日掲載

執筆者:水谷 恭子弁護士

賃貸マンションから転居しました。敷金の一部を返してもらえると思っていたら、逆に、家主から修繕費用との差額を求められました。支払わなければいけないでしょうか。

相談者:先日住んでいた賃貸マンションから引っ越したのですが、あてにしていた敷金が返ってこないので困っているんです。

弁護士:敷金はいくら返してもらえる予定だったのですか。

相談者:入居する際に五十万円の敷金を差し入れていたのですが、敷引きが三割という契約だったので、三十五万円は返してもらえると思っていたんです。

弁護士:それで家主に返還を求めたのですね。

相談者:そうです。ところが家主は畳の表替えや壁紙・襖(ふすま)の張り替え費用に四十万円かかったと言って、逆に私に対して差額の五万円を支払うように求めてきたのです。

弁護士:これは部屋を借りたときの契約書ですね。

相談者:この契約書には賃貸期間中の修繕に関して「畳の表替え、壁紙・襖の張り替え、その他の小修繕に要する費用は借主の負担とする。」という特約条項があるでしょう。家主はこの特約条項を理由に、私が負担すべきだというのです。

弁護士:借主の通常の使用によって生じた建物の消耗や破損などの修繕費用は本来家主が負担すべきものです。
居住用建物の場合、賃貸期間中の小修繕を借主の負担とするというような特約があっても、それは本来家主が負うべき修繕義務を免除したにとどまり、特別な事情がない限り借主に修繕義務を課したものとまではいえない、と考えられています。
ですから特別な事情がない限り、借主が小修繕などをしないで退去しても契約違反にはならず、退去後に家主が行った小修繕などの費用を借主が支払う義務もないといえるのです。

相談者:特別な事情とはどんなことですか。

弁護士:たとえば家賃が特に低めに設定されているような場合です。

相談者:私は家賃が割高だったこともあって引っ越しを決めたんですよ。

弁護士:ところで、畳や壁紙、襖はどんな状態だったのですか。

相談者:畳、壁紙、襖は日焼けなどで多少変色した部分があり、壁には押しピンの跡が二、三カ所ありましたが、特にひどい汚れや傷があったというわけではありません。

弁護士:日焼けによる変色は年月の経過による自然の消耗ですし、壁の押しピンの跡は通常の使用による損傷といえますから、借主の注意義務違反による損害賠償というようなことも問題になりませんね。あなたには畳の表替えや壁紙・襖の張り替え費用を負担する義務はありませんよ。

相談者:それでは、五万円を支払う必要はなく、敷金の三十五万円を返してもらえるのですね。

弁護士:そのとおりです。