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2000年 神戸新聞掲載『くらしの法律相談』

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「日照権をめぐる問題-被害の大きさが焦点」神戸新聞 2000年9月27日掲載

執筆者:岡崎 晃弁護士

自宅の隣にビルが建つことになりました。日陰になって困りますが、どうすればよいでしょうか。

Aさん:先生、私の家の南隣に十階建てのビルが建つらしいんです。

弁護士:日照権の問題ですね。日照をめぐる法規制には、(1)国や地方自治体による行政上の規制と、(2)民事の裁判所を通じて調整するための法律が考えられます。今日は、(2)の民事上の問題について説明しましょう。

Aさん:いつごろ、何をすればよいですか。

弁護士:ビルが建つ前がポイントですね。ビルが建った後で、撤去することは不可能ですから。まず、建築主が地域住民に説明会を開きます。話し合いで設計変更にいたれば…。でも困難でしょう。
そこで、次に裁判所に「建築工事禁止仮処分」を申し立てることが考えられます。ただ、建物が建築されようとしているときに、早急に資料を集めて申し立てをしなければ間に合いません。資料として日影図が必要です。建物が、北側隣地にどの程度影を落とすか図形化したものです。

Aさん:ところで、申し立て後の手続きはどうなりますか。

弁護士:住民の主張が認められれば、仮処分決定が出ます。ただ、あくまでも仮の処分ですから、その後、通常の訴えを提起する必要があります。

Aさん:何がポイントになりますか。

弁護士:日照被害が受認限度(社会生活上、我慢すべき限度のこと)を超えているか否かです。人は社会生活を営む上で、互いに譲り合わなければなりません。あなたは太陽が当たる生活がしたい。これに対して業者はビルを建築して営業がしたい。この二つの利益をいかに調整するかを決めるのが民法なのです。

Aさん:法律は弱者の味方ではないのですか?

弁護士:仮に、あなたが土地の所有者や業者だとしたら、隣人に高い建物を建ててはいけないと言われて、「はい分かりました」とすぐに納得しますか?

Aさん:…。裁判に勝てるでしょうか。

弁護士:住民が勝った例もあれば、負けた判例もあります。どの紛争にも特有の事情があるので、一概には言えません。世の中に全く同じ紛争はないので、あらかじめ資料を整理して、弁護士さんに直接会って、その紛争特有の具体的事情を説明することが重要です。

Aさん:分かりました。手元にある詳しい資料を持って、相談にうかがいます。