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2005年 神戸新聞掲載『くらしの法律相談』

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「講演をHPに-『著作物』に該当し注意を」神戸新聞 2005年8月2日掲載

執筆者:虎頭 信宏弁護士

Q:私は、5歳と3歳の子育て中で、親同士で育児の悩みの相談や情報交換ができる場をと、ホームページ(HP)を開設しています。先日、私が聴いた教育講演会で、ある高名な先生のお話が印象に残ったので、その内容を私のHPに載せたいのですが、無断でしてもいいのでしょうか。

A:一般に「著作権」というと、小説や音楽を思い浮かべる方が多いと思いますが、著作権法上の著作物とは「思想または感情を創作的に表現したもの」と規定され、講演も「著作物」にあたるとされています。そこで今回のケースも、HPへの掲載方法によっては著作権侵害となり、差し止め請求や損害賠償請求の対象になることがあります。

では、どのような場合に著作権侵害になるのでしょうか。まず、著作権法は、著作者の「表現」を保護する法律ですから、(1)講演者の思想や感情、アイデア(講演者の教育に対する考え方など)を載せたり、講演内容をごく簡単に紹介する程度の場合は著作権侵害にはなりません。これに対し、(2)講演を録音テープなどに記録し、それをそのまま載せる場合や、(3)講演内容の一部を省略し、表現を短縮したり話の順序を変えて要約して載せるとしても、もとの講演と要約の表現の本質的な特徴が同一である場合は、著作権侵害になる可能性があります。

しかし、(2)(3)のような場合にすべて著作権侵害になるとすると、講演者の意見を他の人(親)に紹介できなくなるなど、著作者以外の人が著作物を有効に利用する機会が著しく減ってしまいます。そこで、著作権法は、公表された著作物を「引用」し利用することを認めており、この場合には著作権侵害にはなりません。

そして、判例は、「引用」として認められる基準として、(ア)引用して利用している著作物(HPの記事)と引用されて利用されている著作物(講演)が明確に区別されている(イ)両著作物の間に主従関係がある(HPの記事が主たる存在である)(ウ)引用される著作者(講演者)の人格権を侵害しない-が必要としています。また、著作権法は、「引用」にあたっては、著作物の出所(講演者の氏名、講演日時、場所など)を明示することを義務付けており、忘れないように注意してください。