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2007年 神戸新聞掲載『くらしの法律相談』

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「子の引き渡し-調停や審判などの方法も」神戸新聞 2007年3月6日掲載

執筆者:西木 秀和弁護士

Q:2年前に夫と別居し、3歳の娘と二人で暮らしています。ところが先日、夫が保育園から娘を連れ去ってしまいました。
その後、夫に娘を引き渡すように言っても応じてくれません。娘を引き渡してもらうにはどうすればよいですか。なお、夫とはまだ離婚していません。

A:あなたと平穏に暮らしていた娘さんを保育園から連れ去った夫の行為は民法上、不法行為となる可能性が大です。

しかし、当然に娘さんを引き渡すよう要求することはできません。離婚をしていないので、夫もまだ親権者であり、娘を育てる権利と義務があるからです。

そこで、どちらが育てるべきか、夫婦の話し合いで決めるのが基本です。しかし、それが無理なら、まず家庭裁判所に対し、「子の引き渡し」の調停を申し立てるのが一般的です。

相談のケースでは、監護者が決まっていないようなので、今後の紛争予防のために、「監護者の指定」も併せて申し立てるのがよいでしょう。監護者とは、実際に子どもの養育・監督・教育に当たる者を言います。

調停は簡易で、あなた自身で申し立てできます。調停では、当人同士は直接会わず、調停委員を通じて、互いの意見を主張し合います。しかし、あくまで合意による解決を目指すものですから、夫が譲らない時もあります。

その時は、審判手続きになります。審判では、裁判官が両親のどちらに、子どもを引き渡すべきか、監護者をどちらにすべきか判断します。この場合、あなたの希望通りの審判が出る保証はありませんが、審判には従わなければなりません。

ただし、子どもが3歳と幼いことや、2年間育てた実績があることから、一般的にはあなたの方が有利と考えられます。この点と子どもが連れ去られたことをしっかりと主張してください。

最後に、調停や審判による解決が待てない緊急性がある際は、申し立てとともに「調停前の仮の処分」、「審判前の保全処分」を申し立て、とりあえず子どもを引き渡すよう請求することもできます。