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2007年 神戸新聞掲載『くらしの法律相談』

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「分譲マンションの水漏れで損害-共用、専有で異なる賠償請求先」神戸新聞 2007年9月18日掲載

執筆者:曽我 智史弁護士

Q:分譲マンションの3階に住んでいますが、上の階で水漏れ事故がありました。原因は、マンションの配水管の老朽化のようです。水漏れで生じた損害は、上の階に住む人に請求することになるのでしょうか。

A:相談のケースの場合、誰に対して請求するかは、水漏れがどの個所から生じているか、さらには、その個所が、マンションの共用部分に当たるのか、直上階に住む人の専有部分かで、結論が異なります。

水漏れ個所が直上階に住む人の専有部分に当たるというのであれば、直上階に住む人に損害賠償請求をすることになります。一方、共用部分であれば、マンションの管理組合に請求することになります。

相談内容について具体的に検討すると、水漏れが、配水管のうちマンション居住者が共同で利用する本管から生じたものであれば、本管は共用部分に当たりますので、マンションの管理組合に請求することになります。

また、水漏れが配水管のうちマンション各戸専用の枝管から生じたものであった場合、その枝管が直上階に住む人の専有部分かどうかで、結論が出ることになります。

これについては、配水管が設置された場所のみならず、その配水管の機能、点検、清掃、修理などの管理の方法、建物全体の配水との関連などを総合的に考慮することになります。

例えば、水漏れ個所が、直上階の部屋専用の枝管にあったとしても、直上階に住む人が、その枝管の点検修理をするには、直下階の部屋からその天井裏に入って実施するほかに方法がないというようなケースでは、共有部分に当たると判断されることがあります。この場合、管理組合に対して損害賠償請求をすることになるでしょう。

専有部分かどうかは、このように当該配水管が特定の住人の利用に供されているかどうかだけで決まるわけではないことに注意が必要です。

なお、水漏れの原因が共用部分にあるか専用部分にあるかはっきりしないとき、法律上共用部分にあると推定されます(区分所有法9条)。