アーカイブス

このページは旧サイトに掲載されていた記事のアーカイブです。

くらしの法律相談(2008年-2016年)

HOME > くらしの法律相談(2008年-2016年) > 2008年 神戸新聞掲載『くらしの法律』相談 > 自筆遺言と公正証書-内容違えば新しい方が有効 神戸新聞 2008年7月15日掲載

2008年 神戸新聞掲載『くらしの法律』相談

自筆遺言と公正証書-内容違えば新しい方が有効 神戸新聞 2008年7月15日掲載

執筆者:森川 拓弁護士

Q:先日亡くなった父の部屋を整理していると、遺言が2通見つかりました。
1通は3年前に作成された父の自筆による遺言で、もう1通は10年前に作成された公正証書遺言でした。
内容は少し異なるのですが、どちらを優先すべきなのでしょうか。

A:結論からいえば、いずれの遺言も有効ですが、内容に抵触する部分がある場合には、後の遺言で前の遺言を撤回したとみなされますので、その部分については後の遺言が有効になります。
抵触しない部分については前の遺言も有効です。
 まず、遺言は、法律上定められた方式で、作成しなければなりません。
そしてお父さまが、10年前に作成されたのは公正証書遺言、3年前に作成されたのは自筆証書遺言にあたると思われます。
 ところで、公正証書遺言は、証人二人以上が立ち会い、公証人に作成してもらわねばならないのに対し、自筆証書遺言は遺言者がその全文、日付、名前を自書し、押印するだけで作成できます。
 感覚的には、厳格な手続で作成された公正証書遺言が、簡易な手続で作成された自筆証書遺言に優先するように思われるかも知れません。
しかし、法律上は、前記のとおり遺言の方式にかかわらず、いずれも有効であり、内容に抵触する部分がある場合には、抵触する部分については後の遺言が有効になります。
 従って、自筆証書遺言により公正証書遺言を撤回することも可能なわけです。
 もっとも、次のことには注意して下さい。
自筆証書遺言は、簡単な方法により作成できる反面、偽造したり、隠したりすることもできるため、家庭裁判所で検認という手続を経なければなりません。
また、封印のある場合、家庭裁判所で相続人らの立ち会いのもと開封しなければなりませんので、勝手に開けてはいけません。
 さらに、自筆証書遺言については、一人でも作成できることから、 方式違反を理由に、
無効となることもあります。
例えば、過去の裁判例では、日付として「昭和四拾壱年七月吉日」と記載したため、無効とされたものもありますので、そもそも遺言として有効か注意する必要があると思います。