アーカイブス

このページは旧サイトに掲載されていた記事のアーカイブです。

くらしの法律相談(2008年-2016年)

HOME > くらしの法律相談(2008年-2016年) > 2009年 神戸新聞掲載『くらしの法律』相談 > 内縁関係の夫の遺産-特別縁故者として分与請求 神戸新聞 2009年3月3日掲載

2009年 神戸新聞掲載『くらしの法律』相談

内縁関係の夫の遺産-特別縁故者として分与請求 神戸新聞 2009年3月3日掲載

執筆者:杉浦 健二弁護士

Q:私と夫は、これまで30年間夫婦として暮らしてきましたが、事情があって婚姻届は出しておらず、
いわゆる内縁関係にありました。
この度、夫は亡くなったのですが、私には夫の遺産を相続する権利はあるのでしょうか?

A:内縁関係とは、婚姻届は出していないが、事実上婚姻状態と同様の状態にある関係のことを指します。
 内縁の場合、婚姻に準ずるものとして、できる限り婚姻の法的効果を及ぼそうというのが判例の傾向です。
たとえば、婚姻費用の分担義務や、離婚時の財産分与義務などは、内縁関係にも準用が認められています。
 もっとも、内縁者には相続権は認められていません。
相続人となる者は明確に判断できる必要があることが、その理由のひとつとしてあげられています。
 では、内縁関係にあったパートナーが死亡した場合、内縁者がパートナーの財産を取得できる方法としては、
どのようなものが考えられるでしょうか。
 まず、パートナーが生存中であれば、遺言を書いてもらう方法が考えられます。
この場合、遺言の内容を相続人の遺留分(一定の法定相続人に対して最低限度の取り分を保障する制度のことです)を侵害しないものとしておけば、後日のトラブル発生を未然に防止できるでしょう。
 次に、パートナーが既に死亡している場合であっても、パートナーの相続人となる者が誰もいなければ、内縁者は特別縁故者として財産分与を請求できる可能性があります。
特別縁故者とは、(1)被相続人と生計を同じくしていた者(2)被相続人の療養看護に努めた者(3)その他被相続人と特別の縁故があった者-のいずれかに該当する場合のことをいいます(民法958条の3)。
相談者はパートナーと30年以上夫婦同然の生活を続けてこられたということですから、(1)に相当し、特別縁故者にあたる可能性が高いでしょう。
 以上、内縁者には相続権はありませんが、一定の場合にパートナーの財産を取得できる余地は残されていることになります。
 特別縁故者としての請求手続きにはかなりの時間と手間を要することを考えると、生前に遺言を書いてもらっておく方がより簡便な方法と言えるでしょう。