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くらしの法律相談(2008年-2016年)

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2009年 神戸新聞掲載『くらしの法律』相談

自宅は残したい-個人民事再生の検討を 神戸新聞 2009年11月17日掲載

執筆者:丹治 典彦弁護士

Q:以前の勤務先が倒産したため、住宅ローンが支払えなくなり、消費者金融から謝金を重ねました。
最近、就職できたのですが、返済が困難な額になってしまいました。
何とか自宅だけは残したいのですが、方法はありますか?

A:まず、裁判所などの法的な手続きを利用しない任意整理や、裁判所を利用した手続きである特定調停によって、債権者と債務者が話し合い、双方にとって折り合いのつく返済方法を見つけることが考えられます。
 しかし、債権者との話し合いが望めないような場合、個人民事再生の手続きを裁判所に申し立てることが
考えられます。
 この手続きは、債務者が破産してしまう前の再起、再建を可能にするためもので、債権者に既存の債務の一部を支払い、残りの債務を免除してもらうものです。
債権者に支払う一部の債務は、債務の返済方法を定めた再生計画にしたがって、原則として3年以内で支払うことになります。
 この手続では、相談者のように住宅ローンがある場合には、住宅資金貸し付け(住宅ローン)に関する特則を利用することで、住宅ローンの返済期間の延長や元本猶予などを受け(ただし、従前どおりの支払いをするケースもあります。)、自宅を確保することが可能になります。
 もっとも、個人民事再生を行うには一定の要件を満たす必要があります。
 具体的には、自営業者など、継続・反復した収入があるか、会社員のように定期的な収入が見込まれる方で、住宅ローンの負債を除いた債務額が5000万円以下でなければなりません。
 さらに、住宅資金貸し付けに関する特則を利用するためには、住宅ローンを担保するために抵当権が設定されていること(住宅ローンを担保するための抵当権の他に、他の債権を担保するための担保権が存在していないことも必要です。)、その住宅が、債務者自ら居住するためのものであることなどが必要です。
 したがって、相談者の場合も、以上のような要件を満たすようであれば、個人民事再生の手続きを利用することを検討すればよいでしょう。