アーカイブス

このページは旧サイトに掲載されていた記事のアーカイブです。

くらしの法律相談(2008年-2016年)

HOME > くらしの法律相談(2008年-2016年) > 2010年 神戸新聞掲載『くらしの法律』相談 > 生前贈与の留意点-不公平感ないよう話し合いを 神戸新聞 2010年1月19日掲載

2010年 神戸新聞掲載『くらしの法律』相談

生前贈与の留意点-不公平感ないよう話し合いを 神戸新聞 2010年1月19日掲載

執筆者:山津 源和弁護士

Q:株式会社を設立し小さい工場を営んでいます。
既に妻を亡くしているため、3人の子どものうち1人に、所有する会社の株式や工場の建物を生前贈与したいと
考えています。
私の死後、子供たちの間でトラブルにならないようにする方法を。

A:特定の相続人だけに生前贈与を行うと、遺産分割の際、お子さんたちの間で、次のようなトラブルが生じる
恐れがあります。
 まず、本件贈与は、特別受益に該当する可能性があり、該当すると、相続人間の公平を図るべく贈与財産も
相続財産に含めて遺産分割協議をすることになります。
そこで、株式及び建物の価額をいくらとみるかなどについて、相続人間でトラブルとなるおそれがあります。
 これを防ぐ方法として、遺言書で本件贈与分を相続財産に含めなくてよいといった意思表示をすることが
挙げられます。
 もっとも、上記意思表示をしても、3人のお子さんは、各自被相続人の財産の6分の1の遺留分を有します
(ただし非嫡出子の遺留分は嫡出子の半分)。
本件贈与が、特別受益に当る場合や、相続開始前1年以内になされた等の場合で、他の2人のお子さんの
遺留分を侵害するとなりますとやはりトラブルとなる恐れがあります。
 これを防ぐ方法として、贈与財産の価額に注意して遺留分侵害にならないようにすることや、生前の遺留分放棄がありますが、後者は一定の条件のもとで家庭裁判所の許可が必要です。
このほかに、贈与の前にあなたと3人のお子さんで財産の分割について十分話し合い、不公平感が生じないようにし、合意内容を遺言書に記載して残しておくのがよいでしょう。
 さらに、本件贈与が会社の事業承継が目的である場合、中小企業の事業承継をスムーズに進められるようにすることを目的として平成20年にできた、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」に定められた諸制度を使えるかもしれません。
この法律には、一定の条件を満たせば遺留分の制約などを免れることができる規定があります。
生前贈与にはさまざまな法的な問題点がありますので、贈与の前に弁護士に相談するのがよいでしょう。