珍しい愛車で事故-加害者への請求は金銭賠償だけ- 神戸新聞 2010年8月17日掲載
Q:追突事故で10年以上愛用している車が修理不能になりました。今では珍しい車でなかなか流通していません。加害者に、同じ車種の中古車を現物で用意するよう要求することはできますか。
   A:質問では、加害者に追突され、質問者の方の愛車が修理不能な状態になっています。
   このような場合、自分の車を壊されてしまった被害者は、加害者に対して法律上どのようなことを
   請求できるのでしょうか。
  加害者の行為で自分の所有物を壊されてしまった場合、加害者の行為は、法律上「不法行為」にあたると
 考えられています。
 民法は、このような不法行為があった場合は、被害者は加害者に「損害賠償請求」ができると定めています。
  この損害賠償請求ですが、その内容は、特別な法律の定めがある場合を除き、「金銭賠償」つまり、
 被害者が受けた損害を金銭に換算し、その金額の支払いを請求できるのみであるとされています。
 所有物が壊されてしまった場合にも、被害者としては、壊されたものと同等のものを現物で返還するよう
 請求することはできないとされているのです。
  金銭賠償が原則とされている理由としては、
 (1)調達が難しいものを現物で返還しなければならないとすると、加害者側に不可能を強いることになりかねない
 (2)損害の多くは金銭に換算でき、現代社会では金銭賠償のほうが合理的である-
 などが挙げられます。
  今回の質問の場合も、質問者は、加害者に愛車と同じ車種の中古車を現物で返すように要求することは
 できず、 金銭による賠償を請求することになります。
 この場合、中古車市場価格を算出する資料として利用される「レッドブック」などの資料を参考に、
 事故時の時価を見積もった上、その額から修理不能になった車両の売却価格(スクラップとしての価格)を
 引いた額の支払いを、損害賠償として加害者に請求することになると 考えられます。
