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くらしの法律相談(2008年-2016年)

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2010年 神戸新聞掲載『くらしの法律』相談

無断で離婚届提出-受理されると家裁で調停 神戸新聞 2010年9月21日掲載

執筆者:川元 志穂弁護士

Q:別居中の夫が私に無断で離婚届を役所に出していたことが分かりました。
離婚は成立したことになるのでしょうか

A:離婚が有効となるためには、離婚届出のときに夫婦双方に離婚意思がなければなりません。
相談の事例のように別居中の夫が妻に無断で離婚の届出をしていた場合、妻には離婚届出のときに
離婚意思がありませんから、離婚は無効となります。
 もっとも、夫が無断で出した離婚届がいったん役所で受理されてしまうと、戸籍には離婚の記載がなされ、
夫婦の戸籍は別々に分かれてしまいます。その戸籍を、離婚の無効を理由に元の状態に戻すためには、
家庭裁判所による審判または判決が必要となります。
 具体的には、まず、相談者は、家庭裁判所に対して調停の申立てをしなければなりません
(これを「調停前置主義」といいます)。
この調停で相談者と夫との間に合意が成立し、離婚無効の原因となる事実について争いがなく、家庭裁判所が
正当と認めるときは、離婚無効確認の審判がなされます。
 これに対し、調停で相談者と夫との間に合意が成立しなかったり、事実に争いがある場合等には、相談者は、
家庭裁判所に対して離婚無効確認の訴えを提起する必要があります。この訴えが提起された場合、
家庭裁判所が、証拠を調べ、離婚届出時に相談者に離婚意思がなかったと判断したときは、
離婚無効確認の判決がなされます。
 以上のように、いったん離婚届が受理されてしまうと、その後に離婚の無効を主張するには面倒な手続が
必要となります。この点、夫婦の一方に離婚の意思がないのに他方が無断で離婚の届出をするおそれが
ある場合、 あらかじめ本籍地の市町村長に対して不受理申出をしておくと、その申出を取り下げるまでは
協議離婚届が受理されないという不受理申出制度がありますので、そのようなおそれがある場合には、
この制度を利用されることをお勧めします。