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くらしの法律相談(2008年-2016年)

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2010年 神戸新聞掲載『くらしの法律』相談

コーヒーでやけど-懲罰的損害賠償は認められず 神戸新聞 2010年12月21日掲載

執筆者:堀田 亜紀弁護士

Q:先日、店でコーヒーを注文した際、ふたがしっかりしまっていなかったため、中身がこぼれてやけどをしました。
アメリカでは、似たようなケースで多額の賠償金を得られたと聞きました。
日本ではどうなのでしょうか。

A:損害賠償を請求できるのは、民法上、相手方に、債務不履行責任(契約責任)または不法行為責任が
認められる場合です。債務不履行とは、債務者が正当な理由がないのに契約上の義務を履行しないことですが、
債務不履行について債務者に故意、過失、または公平の見地からみて故意、過失とみられる事情があり、
債務不履行と損害との間に相当の因果関係があれば、債務不履行責任が生じることになります。
不法行為責任とは、責任能力がある者が、故意または過失によって他人の権利を侵害し、これによって損害を
生じさせた場合の責任です。
 今回の場合、店員がコーヒーをこぼし、あなたがやけどをしたのであれば、店員には不法行為に基づき、
店には不法行為ないし債務不履行に基づき損害賠償を請求できます。不法行為責任は、店員と使用者である
コーヒーショップの両方に請求できますが、一方が支払えば他方は免責されます。あなたが自分でコーヒーを
こぼしてやけどをした場合でも、店側に、事故を予見でき、かつ防ぐことができたなどの事情が認められれば、
損害賠償を請求できます。いずれの場合も、あなたにも事故発生の過失があれば、損害賠償額は減額されます。
 損害賠償の内訳としては、治療費、治療にかかった交通費、やけどのために仕事ができなくて減収が
あった場合の休業損害、精神的苦痛への慰謝料などです。
 アメリカでは、このような損害賠償に加え、懲罰的損害賠償が認められる場合があります。
これは懲罰および同様行為の抑止を目的としており、多額になることがありますが、日本では、
懲罰的損害賠償は認められていません。