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くらしの法律相談(2008年-2016年)

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2012年 神戸新聞掲載『くらしの法律』相談

共有する土地の使途-相手の持ち分買い取る方法も 神戸新聞 2012年11月20日掲載

執筆者:後藤 崇弁護士

Q:100坪ほどの土地を弟と共有しています。私は売却したいのですが、弟は「駐車場にしたい」という考えです。何か良い解決方法はないでしょうか。

A:ご相談のケースのように、親族間で共有されている一つの土地について、意見が合わないため、深刻なトラブルになることがあります。
 民法では、「各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない」と定められています。また、共有物を売却などで処分することは、「変更」に含まれると考えられています。従って、共有不動産を売却するには、共有者全員の同意が必要です。
 相談者が土地を売却するためには、共有者である弟さんの同意が必要です。ただし、相談者の持ち分だけを第三者に売却するのであれば、同意がなくても可能です。
 「土地を駐車場にしたい」という弟さんの意向ですが、駐車場にするということは、土地を第三者に賃貸することになります。弟さんが第三者と締結する賃貸借契約の内容によっては、共有物を「変更」することになって、相談者の同意が必要になります。また、「変更」することにならない場合でも、共有物の「管理」になりますので、弟さんの持ち分が2分の1を下回っているのであれば、やはり相談者の同意が必要になります。
 いずれにしても、相談者が土地全体を売却したいのであれば、兄弟で協議して合意する必要があります。任意の協議が困難であれば、簡易裁判所に民事調停を申し立て、裁判所で協議することも可能です。
 また、地方裁判所に共有物分割請求訴訟を提起する方法もあります。訴訟では、現物分割が基本とされていますが、現物分割が不可能な場合には、裁判所が競売を命ずることもあります。
 共有者間の公平を害さないのであれば、価格賠償といって、特定の共有者が他の共有者の持ち分を買い取る方法で、分割が認められる場合もあります。相談のケースでは、弟さんが相談者の持ち分を買い取ることができれば、よい解決になるかもしれません。
 また、ご兄弟が親の土地を相続したけれども、遺産分割協議がまとまらずに、土地の登記が親の名義のままで共有しているような場合、相談者が単独で法定相続分に従った共有相続の登記をすることもできますが、一般的には、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立て、解決することが多いと思います。