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くらしの法律相談(2008年-2016年)

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2012年 神戸新聞掲載『くらしの法律』相談

養子の子に財産を引き継がせたい-正式な遺言書の作成が必要 神戸新聞 2012年12月4日掲載

執筆者:判治 裕介弁護士

Q:私には夫も子どももいません。Aを養子にして私の財産を引き継いで欲しいと考えていますが、Aも高齢であるため、その点が心配です。もしもAに何かあった場合、Aの子が財産を引き継いでくれるのでしょうか。

A:今回のようなご相談では、Aさんの子どもがあなたの財産を相続することはありません。
 財産を残して亡くなった方よりも、先に子が早く先立った場合、先に亡くなった子の子、つまり孫にあたる方が代わりに財産を相続します。この場合、財産を残して亡くなった方と孫にあたる方との間には、直系の親族関係が必要になります。
 養子縁組をしても、養親と養子が親子関係となるだけで、養親と養子の子との間には親族関係は生じません。このように養親と養子の子はあくまで他人ですから、養子が先に亡くなっても養子の子が養親を相続することはありません。
 今回の場合、あなたとAさんとの間で法律上の親子関係は成立しますが、あなたとAさんの子どもとの間には、法律上の親族関係は生じません。ですから、Aさんが先に亡くなった場合、Aさんの子どもは、あなたの財産を相続できません。
 しかし、あなたの相続人がAさん以外おらず、Aさんの子どもがあなたと生計を同一にしていたり、あなたの療養看護に努めていたりしたのなら、特別縁故者としてあなたの財産の分与を受けることができる場合があります。
 特別縁故者として財産の分与を受けるには、家庭裁判所に財産分与の申し立てをし、裁判所の判断を得る必要があるため、Aさんの子が必ず財産の分与を受けられるかは分かりません。
 確実にAさんの子に財産を引き継いでもらいたいのであれば、Aさんが自分より先に死亡した場合にはAさんの子に財産を遺贈するという内容の遺言書を作成しておくのがよいでしょう。
 遺言であれば、どの財産を誰に引き継がせるかということまで定めることができますので、財産の引き継ぎについてあなたの意思を反映することができます。
  遺言については、法律上定められた方式で作成しなければいけません。内容や方式にご不安があれば弁護士にご相談ください。