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くらしの法律相談(2008年-2016年)

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2013年 神戸新聞掲載『くらしの法律』相談

身体的拘束からの一時的な解放-裁判所に保釈請求手続きを 神戸新聞 2013年6月18日掲載

執筆者:坂本 知可弁護士

Q:夫が傷害罪で逮捕され、拘置所にいます。夫の父が危篤との知らせを受けました。夫を父親に会わせてやりたいのですが、特別にそうすることはできないでしょうか。

A:刑事事件で逮捕・勾留されて身体拘束を受けた場合、起訴後であれば、身体拘束を解くために保釈請求手続きを取ることができます。保釈は、身体拘束を解くことで生じる障害がない限り、原則的に認められます。例外的に保釈が認められないケースについては刑事訴訟法という法律で決まっており、重大事件であったり、常習性があったりするときなどがそれに当たります。ほかにも、証拠を隠滅する可能性があったり、被害者を脅して真実を証言させない可能性があったりする場合などもそれに当たります。従って、ご相談のケースでは、例外的な事情がないことを裁判所に説明すれば、保釈が認められる可能性があります。例外的な事情があったとしても、裁判所が裁量で保釈を認めることもありますから、諦めずに保釈を求めるべきです。
 ただし、保釈を認めてもらうためには、保釈保証金という裁判所が提示する相当高額の金銭をいったん裁判所に預けなければなりません。
 今回のケースのような緊急時には、保釈以外に「勾留執行停止」が認められる可能性があります。裁判所が「適当と認めるとき」に文字通り一時的に勾留の執行を停止してもらえるというものです。
 裁判所が「適当と認めるとき」がどのようなときであるかについては、法律では明確に決まっていませんが、実務上、ご相談のケースのように近親者が危篤だったり、被疑者・被告人自身が病気で治療のために入院せざるを得なかったり、就職試験や入試を受けなければ将来の進路に支障が生じたりする場合などがそれに当たるとされています。
 ご相談のケースでは、勾留執行停止を認めるに相当な事情が存在すること、今まさに勾留執行停止をしなければ取り返しのつかないことになることを裁判所に詳しく説明して、一時的に身体拘束を解いてもらえばよいでしょう。