アーカイブス

このページは旧サイトに掲載されていた記事のアーカイブです。

くらしの法律相談(2008年-2016年)

HOME > くらしの法律相談(2008年-2016年) > 2013年 神戸新聞掲載『くらしの法律』相談 > 店に預けたかばんの紛失-中身を告げていれば弁償 神戸新聞 2013年11月19日掲載

2013年 神戸新聞掲載『くらしの法律』相談

店に預けたかばんの紛失-中身を告げていれば弁償 神戸新聞 2013年11月19日掲載

執筆者:辻 のぼる弁護士

Q:飲食店で食事をした際、店の人に高価な宝石の入ったかばんを預けました。ところが、理由は不明ですが、かばんがなくなってしまいました。店に弁償してもらえますよね。

A:相談のように、飲食店などが客から物を預かったときの責任については、商法に定められています。
宝石など高価な物の場合は、商法595条に規定されています。客が飲食店などに「高価品」を預けるとき、物品の種類と価格を告げていなければ、飲食店などは損害賠償責任を負わないとしています。
なぜ、このような規定になっているのでしょうか。店は、あらかじめ預けられる物品の種類と価格を告げられていれば、十分な注意を払うことができます。しかし、そうでない場合まで、責任をとらなければならないのは、店にとって酷だからと考えられています。
また、595条の高価品とは、大きさや重さの割に著しく高価な物品のことを意味するとされています。物品の大きさや重さから高価な物と分かる場合は、物品の種類と価格を告げられていなくても、十分な注意を払う必要があると分かるからです。
相談事例で、かばんの中の高価な宝石は、595条の高価品にあたります。相談者が、店の人にかばんを預ける際、宝石が入っていることと、価格を告げていた場合には、店は弁償しなければなりません。一方、告げていなかった場合には、弁償しなくてもよいということになります。
これは、商法における飲食店としての損害賠償責任がないということです。店の不注意が分かれば、交通事故などと同様に民法の不法行為責任として弁償してもらえる余地があります。