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くらしの法律相談(2008年-2016年)

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2014年 神戸新聞掲載『くらしの法律』相談

未返済のまま放置した借金-消費者金融なら5年で時効 神戸新聞 2014年1月7日掲載

執筆者:中川 憲一弁護士

Q:過去に消費者金融から借金をしたのですが、一部未返済のまま放っていました。7、8年何もなかったのに、最近、督促のはがきが届きました。多額の利息も請求されていますが、払わなければならないですか。

A:借金の「消滅時効」を「援用」することにより、払わないですむ可能性があります。援用は、ある事実を自己の利益のために主張することです。
借金の時効に関する法律の規定をみましょう。一般に、貸主が、貸金を返してもらう期日から10年間何もしなければ、請求する権利はなくなります(民法166条1項、167条1項)。これを消滅時効と呼んでいます。消費者金融会社などの「商人」が貸主である場合は、時効期間が5年に短縮されています(商法522条)。
時効は、法定の期間が経過したことに加えて、当事者が援用(主張)することで初めて確定的に効果が生じるとされています。返済を免れたいならば、貸主にそのことを伝える援用という行為が必要になります。貸主に対する内容証明郵便などで行うのが一般的です。
ただし、消滅時効には「中断」という規定があります。貸主が借主に対して貸金返還を求める訴訟を起こした場合や、借主が借金を一部支払うなどして債務の存在を承認した場合が、これに該当します(民法147条各号)。中断すると、それまで進行していた時効期間はリセットされ、再度、時効期間が一からスタートすることになります(民法157条1項)。
今回のケースは、一部未返済のまま7、8年放置していましたから、少なくとも最後に返済した時点までは、借金の存在を承認していたことになります。最後に返済した日が時効の起算点となり、中断なく5年が過ぎていれば、時効を援用して返済を免れることができると考えられます。
なお、今回のケースでも、すでに時効期間が過ぎていることを知らずに、貸主とあらためて分割払いの合意をしたり、借金を一部でも支払ったりしているときは、注意が必要です。時効になっていたことに気付いても、時効を援用することができない場合があります。