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くらしの法律相談(2008年-2016年)

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2014年 神戸新聞掲載『くらしの法律』相談

交際相手が勝手に婚姻届-無効求め家裁で手続きを 神戸新聞 2014年8月6日掲載

執筆者:園田 洋輔弁護士

Q:交際している女性が、私の知らない間に、婚姻届を出していたようです。籍を抜くには、どうすればよいのでしょうか。

A:今回の事例では、「知らない間に出された婚姻届の法的効力」および「籍を抜く方法」の2点が問題となります。
まず、最初の問題については、民法上、当事者に婚姻意思がない場合は、たとえ届け出があったとしても、その婚姻は無効とされています(民法742条1項参照)。婚姻が有効に成立するためには届け出に加え、当事者双方に婚姻意思があることが必要です。
これは、共同生活の維持、子の監護(監督し保護すること)や養育といった婚姻の機能を営むためには、2人の自由な合意が不可欠であると考えられているためです。なお、過去の判例は、婚姻意思を「当事者間に真に社会観念上夫婦であると認められる関係の設定を欲する意思」と定義しています。
今回の事例では、相談者は知らない間に交際相手に婚姻届を出され、籍を抜くことを望んでいるのですから、婚姻意思がないことは明らかでしょう。したがって、事例の婚姻は無効ということになります。
次に問題となるのが、受理されてしまった婚姻届の後始末をどうするかです。婚姻届が受理されれば、配偶者のいずれかを戸籍筆頭者とした新しい戸籍が作成されます。
今回のように婚姻が無効である場合は、本来婚姻していないにもかかわらず戸籍上は夫婦ですから、訂正する必要があります。これが一般的にいわれる「籍を抜く」という作業です 。
しかし、当事者の主張のみに基づいて戸籍を訂正できれば、婚姻という身分関係が非常に不安定になってしまいます。法律では、戸籍の訂正には家庭裁判所の許可や判決が必要とされています。
したがって、相談者は、家庭裁判所に婚姻無効の調停や審判、裁判のいずれかを起こし、許可の審判や確定判決などを得た上で、戸籍のある役所・役場で訂正の申請をしなければなりません。いずれの手続きが最適であるかは、ケースによって変わってきますので、詳しくは弁護士にご相談ください。