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くらしの法律相談(2008年-2016年)

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2014年 神戸新聞掲載『くらしの法律』相談

試用期間終えて本採用拒否-合理的な理由あるか確認を 神戸新聞 2014年10月15日掲載

執筆者:的場 健祐弁護士

Q:大学卒業後、試用期間3カ月の条件で就職しました。直属の上司からパワーハラスメント的な言動があり、他の上司に相談したところ、試用期間最終日に「明日から来なくていい」と言われました。仕方がないのでしょうか。

A:試用期間は、勤務状態などにより、本採用するかどうかを判断するための期間といわれていますが、無制限に本採用の拒否が許されるわけではありません。
最高裁判決には、通常の試用は使用者の解約権が留保された労働契約なので、本採用の拒否は雇い入れ後の解雇に当たるとして、「解約権留保の趣旨、目的に照らして、客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当として是認される場合にのみ許される」と判断したものがあります。
今回のケースは、なぜ本採用が拒否されたのか、その理由がはっきりと知らされていません。労働基準法では、労働者が解雇の理由について証明書を請求した場合には、使用者は、速やかにこれを交付しなければならないと定められております。まず、本採用拒否の理由を記載した解雇通知書などの交付を求めるべきです。また、就業規則の解雇理由の規定を確認するなども必要と考えられます。
仮に、「直属の上司からパワハラ的な言動があったため、他の上司に相談した」ことのみが理由であれば、客観的に合理的な理由がないとして、本採用拒否は違法である可能性が高いと考えられます。違法な本採用拒否に対しては、裁判所に対し従業員としての地位の確認を求めて訴える訴訟や、労働紛争解決のための制度「労働審判手続」の申し立て、賃金仮払いの仮処分申し立てなどの方法もあります。
これに対して、本採用拒否が適法であった場合、試用期間でも、採用日から14日を超えて解雇するときは、労働基準法上、30日前の解雇予告が必要であり、30日に満たないときは解雇予告手当が必要となります。今回のケースは1日前の解雇予告なので、平均賃金の29日分の解雇予告手当が支払われなければなりません。
試用期間中は、通常の解雇に比べると緩やかに解雇が認められるという考え方も否定されるわけではありませんが、解雇が有効か無効かの判断は専門家でも意見が分かれるような難しい場合もあります。今回のような問題に直面したときは、近くの弁護士や弁護士会などに相談することをお勧めいたします。