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くらしの法律相談(2008年-2016年)

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2015年 神戸新聞掲載『くらしの法律』相談

別居の夫と離婚後すぐ別の人と結婚できるか-女性だけ6カ月は再婚禁止 神戸新聞 2015年5月6日掲載

執筆者:野田 倫子弁護士

Q:ドメスティックバイオレンス(DV)のため、長年別居していた夫と、先月ようやく離婚できました。その間に交際を始めた人がいます。すぐに結婚できますか。

A:民法には6カ月の再婚禁止期間が定められています。民法733条1項は「女は、前婚の解消又は取消しの日から六箇月を経過した後でなければ、再婚をすることができない」と規定しています。もっとも、同条2項で「女が前婚の解消又は取消しの前から懐胎していた場合には、その出産の日から」再婚禁止期間の規定は適用されません。この規定は、父親の推定で混乱しないために設けられています。
民法772条2項によると、「婚姻の成立の日から二百日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から三百日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定」されます。もし前婚の解消直後に再婚がなされると、前婚の解消後300日以内で後婚の成立後200日以後の子が生まれる可能性があり、いずれの夫から生まれた子かの推定が重なってしまいます。そこで、前婚の解消から半年おけば十分だということで、6カ月の再婚禁止期間が定められました。
問いの状況では、前夫とはDVが原因で長年別居していたことから、前夫と離婚直前に性的交渉をもつことは通常考えられません。父親が誰かという推定が重なる事態は想定できないので、例外的に再婚禁止期間は不要と考えられるかもしれません。
しかし、このような場合にも、民法上は例外とはならず、離婚が成立した日から6カ月経過しなければ再婚できません。このように、再婚禁止期間は、父親の推定に混乱が生じにくいケースにまで形式的に適用されてしまうことや、父性の推定の重複を避けるためには6カ月ではなく100日でたりると考えられることなどから、規定の合理性がしばしば問題となっています。
最近では、ある女性が、同規定により再婚時期が遅れ、精神的苦痛を受けたとして国に慰謝料を求めた訴訟について、最高裁判所は大法廷で審理することを今年2月に決定しており、今後の判断が注目されています。