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くらしの法律相談(2008年-2016年)

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2015年 神戸新聞掲載『くらしの法律』相談

中古住宅購入後に雨漏りが判明-瑕疵担保責任追及できる場合も 神戸新聞 2015年6月17日掲載

執筆者:後藤 康仁弁護士

Q:中古住宅を購入後、以前から雨漏りしていたことが分かりました。契約書には、売り主は瑕疵(欠陥)担保責任は負わないとの条項があるので、何もいえないのでしょうか。

A:瑕疵担保責任について、民法は、隠れた瑕疵を知った日から1年以内に契約の解除または損害賠償の請求をすることができると規定しています(570、566条)。しかし、当事者間の合意で適用するかを決めることができる任意規定です。今回のように、瑕疵担保責任は負わない条項を当事者間で合意している場合には、適用されず、売り主は瑕疵担保責任を負わないこととなります。
新築住宅については、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(いわゆる品確法)で、瑕疵担保責任を負わないとの条項は無効(95条)であり、売り主に対し、瑕疵担保責任を追及できる可能性はあります。
しかし、今回の事例は、中古住宅であるため、品確法による保護は難しいです。中古住宅については、品確法のような法律はなく、今回のように、瑕疵担保責任を負わないとの規定で合意している場合には、売り主に瑕疵担保責任を追及することは困難ですが、次の場合には追及できる可能性があります 。
第1は、売り主が宅地建物取引業者である場合は、民法の規定する瑕疵担保責任を免除する特約は無効とされています(宅地建物取引業法40条)。今回の場合であっても、売り主に瑕疵担保責任を追及できます。
第2は、売り主が宅地建物取引業者ではない事業者であり、買い主が消費者の場合は、消費者契約法第10条により瑕疵担保責任を免除する特約は無効とする考え方があります。この考え方が認められた裁判例もあるので、消費者契約法による無効を主張することにより、売り主に瑕疵担保責任を追及する方法も選択肢となります。
第3は、売り主が以前から雨漏りしていたことを知りながら、買い主に伝えなかった場合には、瑕疵担保責任を負わないとの特約をしたときでも、売り主に瑕疵担保責任を追及することができます(民法572条)。