神戸新聞2026年8月5日掲載
執筆者:他谷 耕助 弁護士
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電車内で痴漢と疑われたという話を聞きました。身に覚えがないのに、痴漢を疑われた場合や、逮捕されてしまった場合、どのように対応すれば良いでしょうか。留意すべき点や対処法について教えてください。
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身に覚えがないのに痴漢を疑われた場合、困惑するかもしれませんが、落ち着いて行動することが重要です。
疑われた直後は、その場から逃げないでください。逃げ出すと、「痴漢をしたから逃げた」と思われます。両手を胸の高さに上げて潔白をアピールし、「やっていません」と明確に否定してください。その上で駅員を呼び、第三者を交えて対応するようにしてください。
もし、警察官などに逮捕された場合、最初の72時間(最大)は携帯電話も使えず、原則として家族や職場を含めて外部と連絡が取れなくなります。この間、面会できるのは弁護士だけですので、逮捕されたらすぐに警察官に「当番弁護士を依頼したい」と伝えてください。
「当番弁護士」の制度とは、逮捕・勾留をされた人の元へ弁護士ができるだけ早く駆け付け、今後の流れや取り調べへの対応などをアドバイスする仕組みです。当番弁護士は弁護士会から1回限り無料で派遣されます。この制度で早く弁護士を呼び、身に覚えがない状況を正確に伝えてください。弁護士に、家族や職場への連絡を行ってもらうよう依頼することや、その後のサポートについても相談できます。逮捕後に勾留決定されると、身体拘束はさらに続いてしまいます。その際は、国選弁護人や私選弁護人に相談することになります。
また、逮捕直後から、警察で取り調べが始まりますが、「黙秘権」が認められていることを忘れないでください。言いたくないことは一切話す必要はありません。黙秘権は、憲法に定められた当然の権利です。黙秘をすることは決してひきょうなことではありませんし、不利になることもありません。
警察官から「認めれば早く帰れる」などと甘い言葉をかけられることもあります。しかし、痴漢をしていないのに、痴漢したかのような供述調書(取り調べの内容を書いた書類)が作られ、サイン・押印をしてしまうと、後から覆すことは極めて困難になります。そもそも、何もしていないのに、警察官などの言うとおりに「痴漢した」とうそをついた場合に、検察官が不起訴にしたり、裁判で無罪になったりするわけではありません。身に覚えがないのであれば、弁護士と面会して方針が決まるまでは、何も話さない「黙秘権」を使い、供述調書へのサインや押印も拒否してください。
実際の事態に直面すると困惑すると思いますが、当番弁護士の制度だけは忘れないでください。弁護士はあなたの味方です。


