神戸新聞2021年4月7日掲載
執筆者:三井 敦 弁護士
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先日、路上で財布を拾いました。警察に届けようと思い、警察署に向かっていましたが、途中で財布の中の現金が欲しくなり、財布を自分のものにしました。どのような犯罪になるのでしょうか。
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他人から財布を盗んだ場合には窃盗罪が成立しますが、今回の相談のように路上で拾った財布を自分のものにした場合には、遺失物等横領罪という犯罪が成立します。
どちらも他人の物を自分のものにしてしまう行為ですが、異なるのは、窃盗罪が、「他人の占有する物」を盗むのに対し、遺失物等横領罪は「占有を離れた他人の物」を自分のものにしている点です。
遺失物等横領罪は「占有を離れた他人の物」を対象としているため、その物を自分のものにしてしまいやすいという意味において誘惑的要素が大きく、責任は低くなると考えられており、窃盗罪と比べると刑罰は軽いものになっています。
しかし、れっきとした犯罪です。「財布を盗んだわけではない」と軽い気持ちであっても、一生消えない前科がついてしまう可能性があります。落ちている財布を拾ったら必ず警察に届けましょう。
当然、警察署に届けるために財布を拾うこと自体は良い行いであり犯罪にはなりません。今回のケースでは、途中で財布の中の現金が欲しくなりそのまま自分のものにしているため、その時点で遺失物等横領罪が成立します。
落とし物や忘れ物と思って自分のものにした場合であっても、窃盗罪が成立して厳しい刑罰を適用される可能性があります。例えば所有者がかばんを公園のベンチに置いて短時間その場を離れたような場合、「占有を離れた物」(遺失物)とはいえず、このかばんを取れば窃盗罪が成立することになります。
取った物が「他人の占有する物」か、「占有を離れた他人の物」なのかの判断に困難が伴うケースもあります。窃盗罪は遺失物等横領罪より重い刑罰が定められおり、どちらの罪が成立するのかが裁判で争われることもあります。
いずれにしても、忘れ物や落とし物を自分のものにすることは犯罪ですので、絶対にしないでください。