くらしの法律相談(2017年~)

ヒマリオンの部屋ヒマリオンの部屋

(準備中)2021年

入社前に妊娠、内定を取り消された-労働契約成立の有無が重要-

 神戸新聞2021年1月6日掲載
執筆者:上月 祐 弁護士

入社前に妊娠し、通常スケジュールでの入社・研修ができなくなってしまったのですが、それを理由に会社から内定を取り消すという連絡が来ました。妊娠を理由に内定取り消しを行うことはできるのでしょうか。

採用内定の段階で労働契約が成立しているといえるか否かが重要なポイントです。労働契約が成立していれば内定の取り消しは「解雇」となり、解雇規制(労働契約法16条「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を乱用したものとして、無効とする」)に服することとなります。

新規学卒者の場合、一般社団法人日本経済団体連合会が定める「採用選考に関する指針」で「正式な内定日は、卒業・修了学年の10月1日以降とする」とされており、10月1日以降の内定式の開催および入社承諾書等の取り交わしをもって「採用内定」と取り扱うケースも多いです。こうした社会実態から、例えば10月1日以降に内定式を開催し入社承諾書を取り交わしているような場合は、この時点で労働契約が成立したと判断されることが多いと思われます。

中途採用の場合には、採用・交渉過程の個別性が強く、新規学卒者と違って内定式等も行われないため、どの時点で労働契約の成立が認められるかが、より問題となります。

契約成立を判断する上で、給与額の合意の有無は特に重要視されます。新規学卒者の場合は通常、賃金規定等で一律に定められていますが、中途採用者の場合は、能力・経験等に応じて個別的な交渉が行われるため、労働契約の成立要素である給与額が定まらなければ、雇用契約が成立したものとみることができないのです。このほか、勤務開始日や業務内容、福利厚生等の合意事項を考慮し、判断されることになります。

また雇用契約成立後、「妊娠」を理由として内定を取り消す場合、解雇権乱用と判断される可能性は高いと思いますが、内定通知前の会社の説明内容や、妊娠発覚時期等の諸般の事情も含めた総合的な判断は必要です。

労働契約の成立の有無、解雇権乱用の判断には、詳細な事実確認と、難しい法的評価を伴いますから、早めに弁護士等に相談されることをお勧めします。

この記事をSNSでシェアする