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2019年

協議離婚して親権者になったが、夫が息子を離さない-家事調停や審判の利用を-

 神戸新聞2019年9月18日掲載
執筆者:山﨑 晴恵弁護士

 私は夫と協議離婚し、5歳の息子の親権者になりました。養育も私がすることになりましたが、夫は息子は自分が育てると言って離してくれません。やむなく1人で実家に戻りました。どうしたらよいでしょう。

A: まだ5歳のお子さまと離れてしまうことになり、心配なことと思います。しかし、たとえあなたが親権者であっても、法的な手続きによらないで、元夫から無理やり引き離して連れて帰ることは、自力救済となり許されません。裁判所の力を借りて、引き渡しを受けましょう。

 お子さまを取り戻す手続きには、以下の方法があります。一つは民事訴訟による方法。元夫は、あなたの親権行使を妨害していることから、この妨害の排除を求めて裁判所に子の引き渡しを求める訴訟を提起することができます。

 二つめは家事審判による方法です。元夫は親なので、子の監護に関する処分の一内容として、家庭裁判所の審判を利用する方法があります。審判は、調査官などの専門家がお子さまの状況の調査をし、非公開の場で、お子さまの福祉に十分な配慮をしながら審理できる手続きです。監護の問題の解決方法として、訴訟よりもふさわしいと思われます。

 三つめは家事調停手続きによる方法です。家庭裁判所に対し、子の監護に関する処分(子の引き渡し)の調停を申し立てることもできます。調停は、裁判所の指導のもと、調停委員の助言を受けながら元夫との話し合いを進める手続きです。元夫との間で話がまとまれば、調停を成立させ、お子さまの引き渡しを受けることができます。話がまとまらなければ調停は不成立となり、家事審判手続きが開始され、家事審判官(裁判官)が一切の事情を考慮して判断を下すことになります。

 四つめは人身保護請求による方法です。緊急性がある場合は、人身保護法に基づいてお子さまの引き渡しを求めることができます。

 以上、四つの手続きがありますが、元夫婦間でのお子さまの監護をめぐる紛争は、調査官の調査結果を踏まえてお子さまに配慮した判断をすることができる家事調停や審判を利用されることをお勧めします。

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