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病気で休業中に会社から「仕事はない」と言われた-解雇の有効性は慎重に判断-

 神戸新聞2017年8月2日掲載
執筆者:岡本 亮人弁護士

 私はもともと、うつ病を患っています。このたび、再度、うつ病で2カ月間、会社を休まざるを得なくなりました。会社からは、戻ってきても仕事はないと言われましたが、解雇されるのでしょうか?

 会社は病気(うつ病)で休業した労働者を、当然のように解雇できるわけではありません。

 一般的に会社の多くは、労働者の私傷病(業務が原因ではないけがや病気)による欠勤が一定期間以上にわたる場合はこれを休職とし、休職期間満了時でも復職が困難な場合は解雇したり、休職期間満了をもって退職させたりするなどの就業規則を定めています。

 ただ、解雇は労働者の生活の糧を奪うもので、労働者の生活に重大な影響を与えます。そのため、解雇の有効性は慎重に判断されなければなりません。

 会社が労働者を解雇するには「合理的な理由」および「社会的相当性」の要件を満たす必要があります(労働契約法16条)。各要件の有無を判断するために問題となる事実関係は事案ごとに異なりますので、一 概には言えません。ただ、病気休職により解雇されるケースで問題となる事実関係には、次のようなものが考えられます。

 ①解雇は就業規則に基づくか。解雇が就業規則に定める休職期間終了後のものか、解雇事由に該当するかなどが問題となります②健康状態は回復する見込みがあるか。これは、医師の判断が重視されます。③解雇を回避するための措置を取り得るか。休職期間満了時点の健康状態が、休職前と同じ業務に戻ることは困難でも、他の軽易な業務ならば従事することが可能な程度に回復しているケースが考えられます。また、もう少し治療や療養に時間をかければ、復職が可能な場合も考えられます。そのような場合、会社による配置転換や復職準備期間の提供の有無が間題となり得ます。

 ここまでは私傷病による休職について説明しましたが、仮に業務上の傷病によって休業する場合、会社は特別な補償をしない限り、休業期間およびその後の30日間は解雇できません(労働基準法19条)。 さらに、今回紹介したケースで、長時間労働など業務が原因でうつ病になって休業する場合、会社は解雇することはできません。

 

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