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2018年

地震で建物が崩壊し第三者がけがした場合-所有者は損害賠償責任負う-

 神戸新聞2018年8月15日掲載
執筆者:世良 峻弁護士

 私は、所有する建物を賃貸しています。地震などで建物の塀や屋根が崩れて、歩行者ら第三者がけがをした場合、私も責任を負わなければならないのでしょうか。

 民法第717条1項は「土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。 ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない」と定めています。

 この規定は、建物など土地の工作物を事実上支配する占有者に第一次的な責任を定め、二次的にその所有者の責任を定めています。

 占有者は過失がなければ責任を免れることができるのに対して、所有者は過失がなくても責任を免れることはできないとされています。従って、建物に「設置又は保存の瑕疵」がある場合、その所有者は原則として賠償責任を免れることができません。

 では、建物を巡り「設置又は保存の瑕疵」があるかどうかはどのように判断するのでしょうか。「瑕疵」 はここでは、工作物の建造(「設置」)またはその後の修理・維持管理など(「保存」)に欠点があることを指しています。

 事例では、①建物で通常予想される危険(地震で建物の塀や屋根が崩れることなど)②その危険に対して備えるべき通常の安全性(塀や屋根の地震に対する

 耐久性など)を確定した上で、建物に瑕疵があったか否かが判断されます。

 地震などが引き金となった場合でも、建物の瑕疵が損害の原因の一部と判断される限り、建物の所有者は損害を賠償する責任を負います。ただ、想定外の大規模な自然災害が生じた場合は、建物に瑕疵がなかったと判断され、損害賠償責任を負わないこともあります。建物の瑕疵が認められても、自然災害の損害の程度によって相応の減額が認められる例もあります。

 事例のようなケースでは、建物の所有者が損害賠償責任を負う可能性が高いので、日ごろから自己の所有する建物の状態を確認し、事故が起こらないよう予防措置をとることが大事です。

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